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クソ親父とあるからには、これを仕込んだのは息子か娘のどちらかだ。
だが腑に落ちない。
大企業の会長の子息と令嬢だ。その絢爛豪華な生活たるや、貴族と同等の水準を満たしているはず。つまりなにひとつとして不自由がないばかりか、周囲の大人でも顎で使える。
自宅では王の気分を味わえただろう。息子は一般家庭では絶対に払えない学費の学校に通わせた。娘はどこの家に出しても不満は出ないレベルの教育を施した。
なにひとつとして不満などないはずだ。
それがなぜ、子供は自分を恨むのか。ツードは不思議でならなかった。
「くっ………煙草を吸っていたら引火するところだったな………」
粉塵爆発の危険性は知っていた。子供たちはツードが愛煙家と知っているゆえ、ソファにこのような仕掛けを施して、殺意を込めながら虎視眈々と父の死を待ちわびていたのだろう。
ツードは毒で苦悶しつつ、ライターを確認すべく上を見る。ライターに仕掛けがあれば終わりだ。なんとしても阻止しなければ───
「な、にぃぃぃいい………っ!?」
視線はライターを置いてあるテーブルを通り過ぎた。天井に血のような赤い文字が書かれていたからだ。
『クソ兄貴の金は俺のもの。俺の金は俺のもの。じゃあなクソ兄貴。あの世で一服こいてやがれ。ア・バ・ヨ』
筆跡と文言からして、弟のテンガだ。
その文字の中央に穴が空いていて、そこからニュッと黒く長いものが伸びていた。
カチカチと音がする。
嫌な予感がして、強引に飛び退くも───遅かった。
ズガン! と銃声が鳴る。
「あがぁぁぁあああああああああっ!?」
天井から伸びていたのはショットガンだった。なにかの仕組みで発砲するように仕掛けられている。
散弾は雨のように降り注ぐ。頭には直撃しなかったものの、両腕と右足が弾け飛んだ。背にも何発かめり込んでいる。
「ひ………が………たすけ………イッ!?」
ちぎれた腕でもがきながら床の上を這う。
その時だ。床に伏せたことでベッドの下にあるものを見てしまった。
『あなたに殺された妻の苦しみを味わえ。本邸の地下に監禁している息子は返してもらう』
筆跡からして、庭師のセブンヌだ。文言に心当たりもある。
シーツの裾から垂れ下がる大きなメッセージボードに、なぜ最初に気付かなかったのか。
そしてメッセージボードの奥が問題だ。
「そん、なぁ………」
ベッドの下、七割を占めるほど敷き詰められた爆薬。
目を疑いたくなるどころではない。もはや背けたくなるほどの惨状に白目を剥いた。
ツードの死因は四段構えでした。こりゃ酷ぇや。




