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次元都市アクシス  作者: 七夜
04 運命の交叉路
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プロローグ

大変長らくお待たせいたしました……プロローグだけで短いけど堪忍

 あの日つないだ手の感触を。

 ふとした瞬間に失われてしまったあの温かさを、片時も忘れたことは無い。


「ごめんな、僕も母さんも急に仕事が入ってしまって」

「どうしても現場に出なきゃいけなくなったのよ。お留守番頼める?」

 家族全員で過ごすはずだった日の朝に、突然上書きされた予定。

 それ自体は珍しいことでもなかったのに、二人同時にというのは初めてだったから。今思えば、必要以上に子供っぽく拗ねてしまった。

 もしあの時、我儘を言わなかったら。二人の職場までついていくと言っていなかったら、未来はどうなっていただろうか。

 意味のない仮定だということはわかっている。あの瞬間には戻れないのだから。

 それでも考えずにはいられない。

 もしあの時、無理やりにでも引き留めていたらと。



 消えかかっていた体温を。

 薄れゆく温もりを取り戻してくれたあの声を、片時も忘れたことは無い。


「おはよう。今日の朝ご飯は……待ってくれ、何で食パンが青色なんだ。まさかノインの差し金……いや差し入れか!?」

 心に空いてしまった穴を埋めてくれる存在。優しくて強くて。誰よりも真っすぐで、誰よりも深く傷ついて。それでもいつか必ず前を向いて、日々を生きていた。

 一緒に過ごした時間。分かち合った喜び。ほんの少しだけ胸を刺すような切なさ。

 彼から受け取った何もかもが愛おしい。苦しいことも悲しいこともたくさんあったけれど、それらを補って余りあるくらいに。

 大好きだった。

 家族として。下手をすれば、それ以上に。

 きっとあれは……叶わぬ初恋だったのかもしれない。



 全てを失った瞬間を。

 手のひらから何もかもが零れ落ちていったあの日を、決して忘れはしない。


「もう、俺たちしか生き残っていないみたいだな」

 悔しさと悲しみに満ちていた。

 燃え尽き、消え果ていく都市を。そこで失われていった仲間たちの命を前に。

 一体どれほどの痛みを抱いていたのだろう。どれだけの感情を抑え込んでいたのだろう。

 それでも彼は、笑ってみせた。

 今にも泣きだしそうな笑顔が、深く脳裏に焼き付いていた。

「俺はあれを止めに行くよ。……放っておいたら、本当に何もかもが無くなっちまう。それだけは絶対にさせない」

 胸の前で握りしめた左手の薬指に、炎が反射する。その手の中にある同じものを身に着けていた人は、もういない。

 一人で行かせるなんて選択肢はなかった。大切な人たちを奪われたのは同じだった。

 なのに、彼は静かに首を振った。

「わかってくれ。俺はもう仲間を……家族を失いたくないんだ。卑怯だとは思う。だけど、これは駄目な兄ちゃんからの最後のお願いだ」

 いつものように真っすぐな瞳。

 いつものような優しい表情。

 これから死へと向かう人間とは思えないほど、穏やかな声で。


「生きてくれ。兄ちゃんが守る、この世界で」



 ――考えずにはいられない。

 もしあの時、嫌だと言っていたら。聞き分けの悪い子供でいられたら。

 何かが変わっただろうか。犠牲が無駄に一人増えただけだろうか。それとも、もっと別の未来があったのだろうか。

 わからない。

 わからないけど。

「……今度は間違えない」

 失われたはずの人々。失われたはずの都市を再び前にし。

 半ばから無惨に砕け折れた剣をかき抱き、決意する。


「お兄ちゃんは、私が守るから」

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