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次元都市アクシス  作者: 七夜
03 天蓋都市・東京
83/104

Chapter03-6

「……流石にいないよね」

 数分前まではビルだった瓦礫の山を一通り検分し、榊幸矢はそう判断する。

 生き埋めにする算段だったが、舞い上がった粉塵が煙幕となって二人の生死を確認できていなかった。あれは十中八九殺せていない。

 ガーディアンの装備している≪アブゾーバー≫は下手な防弾チョッキを遥かに凌駕する防御性能だ。先ほど屋上で晴近が食らった一撃は、素の人間であれば風船のように弾け飛んでもおかしくなかったのだから。加えて、彼には時間遡行による再生能力もある。

 加速装置を持たない幸矢では、全力で逃げに回った彼らを追いかける術はない。先の一戦においては、相手の行動を先手で潰していったからこそ圧倒出来た。

 時間を与えれば与えるほど、自分は不利になっていく。

 ならばこそ、生き埋めなんかより確実性の高い方法を取るべきだったはず。

 慌てて追撃を放ったが、あれはどう考えても威力が足りていなかった。一撃で殺せなければ、傷は治されてしまう。

「どうして、か」

 去り際にかけられた言葉を思い出し、幸矢は皮肉気に笑った。しかし直後に湧き出た感情が笑みを塗りつぶす。

 問いを投げかける晴近の表情は、どこまでも切実だった。

 彼がこの世界の住人だったならば(・・・・・・)、理不尽に怒り不可解さに首をひねるその様は至極当然の反応だ。

 きっと何も知らないのだろう。自分が何者なのかを真の意味で理解していないからこそ、あんな言葉が吐ける。

 疑問に思わないのか。

 こんな異能を操る人間なんて、ただの――

「――駄目だ、感情的になるな」

 幸矢は静かに己を叱責し、煮立ちそうになった心を静めた。

 答えなくてもいい質問へ真面目に答えてしまったのも、判断を誤ったのも、一時の感情に振り回されたから。同じ失敗を繰り返してはいけない。

 榊幸矢は兵士だ。

 今も昔も、変わらず。

「……よし」

 思考が冷えてきたところで、状況を整理し直す。

 敵は見失ってしまったが、大した問題ではなかった。相手は馬鹿ではない。特に狙撃手の少女は自分と近しい思考をしているように感じた。このまま幸矢を放置するのが不味いと気づいているだろう。

 そして、相手から索敵さえしてくれれば居場所を特定可能だ。幸矢の体内にはレーダーを逆探知する装置が埋め込まれている。天蓋の上空に≪サードアイ≫が放たれた際も、赤外線カメラから放たれていた赤外線を感知して撃ち落とした。

 今は相手がアクションを起こすまで、しばらく待っていればいい。

 もし何もしてこないようなら……その時は、もう一度天蓋を穿つ。≪サジタリウス≫のエネルギー残量的に貫通させるほどの出力は出せなくても、半分は抉り飛ばせるし地下都市も大きく揺れる。脅しには充分だろう。

 十分後には実行に移すと決めた幸矢だったが。

「っ、来た」

 相手は素直に索敵を決行したようだ。

 神経と直結した装置が、ざわつくような感覚を伴って相手のいる方向と大まかな距離を教えてくれる。西に約一キロ。東京地上部の地形は既に頭に入れてあり、移動に支障はない。

「行こうか……決着をつけに」

 兵士として、与えられた役目を全うする。

 再度己の胸に刻み込み、幸矢は≪ヒドゥンコート≫を起動した。


 ◇


「反応が消えた……気を付けて」

「あぁ、後ろは任せておけ」

 背中越しにかけられた声を受け、俺は一層警戒心を強める。

 俺とノインは廃ビルから道路に出て、背中合わせの状態で立っていた。全方位へ視線を走らせながら、その時を待っている。

 ≪スマートライフル≫のレーダーに引っかかた直後に消えた反応。いくら何でもタイミングが良すぎる。これで一つ目の予想の裏付けが取れた。

 相手はこちらの索敵を感知し、利用している。最初にノインが発見した時や今しがた索敵を行った際も姿を隠していなかったのは、恐らく隠れている間は向こうもレーダー波を感知できないのだろう。

 こちらの居場所を特定したのならば、近い内に仕掛けてくる。

 ……勝てるのか?

 ノインとの情報共有を経て、相手の手の内は粗方予測がついた。それにしたってあくまで予測に過ぎないし、未だにわかっていないこともある。

 それでもあの青年を放置するわけにはいかない。ノインは彼こそが天蓋に風穴を開けた張本人であると確信している。方法についても彼女は信じるに足りる推論を立ててくれた。

 逃げ続けることは可能だが、もしかしたら攻撃の矛先が再び天蓋へと向くかもしれない。最初に開けられた穴に同じ一撃を叩き込まれたら、どれだけの被害者が出るのか。想像もしたくなかった。

 確証がなくてもやるしかない。わかってはいる。

 だけど、どうしても敗北のイメージが付きまとう。

 心のどこかで絶対的だと思っていた時間停止は通用せず、一方的にあしらわれた。今日は既に能力を使い過ぎている。何もしていないのに頭痛が若干するのは、完全に危険信号だ。これ以上の無駄撃ちはできない。

 加えて相手は、本能と身体能力に任せて襲い掛かってくる変異体とは違う、技術と知性を武器とする敵。人を殺める術を極めた兵士。

 対して俺はどうだ。この世界に来てから一か月の間に、幾度となく変異体とは戦ってきた。中には別の平行世界から飛ばされてきた人間――俺がそうなっていたかもしれない成れの果ても混じっていたかもしれない。

 戦い続けられたのは既に両親を手にかけたこともあるが、ある種の免罪符があったから。

 誰かを殺してしまう前に、楽にしてあげよう。自分勝手かもしれないが、そう思うことで幾らか剣を振るう手は軽くなった。相手が悉く人間からかけ離れた外見をしていたことも、精神的な負担を減らしてくれた。

 だが、今度ばかりはそうもいかない。

 相手は話し合う余地もなく、天蓋への攻撃という形で意思を表明した。俺自身も庇ったのを含めて、二回致命傷を受けている。疑う余地もなく、彼は敵対的だった。

 そして……最悪なことに相手は人間だ。それも、俺と同じ転移者だ。

 勝てるのか……否、戦えるのか?

 変異体になった両親を斬った。それ以外の変異体も数えきれないほど斬った。

 その次が、ヒトだって言うのか。

「ハルチカ」

 背中越しに俺の緊張を察したのか。

 ノインはこれといった感情を込めず、静かに言う。

「いざという時……やむを得ない場合は、小官の判断で終わらせる。ハルチカはただ手筈通りに動いてくれればいい」

「……ノインは、誰かを……人を殺したことって、あるのか?」

「ない。けれど、そのための訓練は積んでいる。必要とあれば躊躇わない」

「そうか……少し安心した」

 向こうには見えていないだろうが、俺は精一杯笑ってみせる。

 もしノインが俺の質問に肯定していたら、気遣いに甘えてしまったかもしれない。手を汚す役目を押し付けてしまったかもしれない。

 でも彼女は否定してくれた。

 俺もノインも人を殺したことがないのなら、これからも殺さなくていいのに越したことはないのだから。

「瞬間移動されようが銃弾ぶち込まれようが関係ねえ。必ず俺たちの手で、あのすかしたイケメンを生け捕りにするぞ」

「……最初からそのつもり」

 決意を新たに、俺たちは周囲の空間を睨む。

 廃都市に降りる静寂。聞こえるのはビルの隙間を吹き抜ける風と、自分の呼吸音だけ。それすらも遠くなるような集中力を注ぎ、俺はその瞬間を待つ。

 チャンスは恐らく一度きり。この機を逃せば、相手はもう二度と俺の間合いには入ってこないだろう。一回で決めなければ、もう後がない。だというのに、タイミングは相手次第。

 緊張感で焼き焦がされていくようだ。大して気温も高くないのに、立っているだけで全身に汗が滲む。正宗を滑り落さないよう柄を握りなおし、額から垂れる汗が目に入らないよう顔を上げ――


 頭上にぽっかりと開いた黒い穴が、微かに目に入った。

 

「――な」

 背中合わせになった二人の直上。僅かに存在した死角。

 偶然の発見に一瞬思考が止まるが、殆ど脊髄反射で身体を翻しノインを突き飛ばした。

 直後、穴から地面へかけて一直線に描かれるオレンジ色の閃光。

 ノインの背を押した左腕は容易く穿たれ、肘から先が千切れ飛ぶ。地面で発生した衝撃波がコンクリートで舗装された路面を粉砕し、足元が捲れ上がる。

 痛みが昇ってくるよりも早く、粉塵が巻き起こるよりも早く、俺は時間拡張を発動した。

 殆ど世界が止まるに等しい最大倍率。能力を乱発した今では、体感時間で数秒と持たない加速された意識の中、狙うのはただ一か所。

 スローになっているにもかかわらず、段々と閉じかけているあの穴に目掛けて。

「っぉぉぉぉらぁああああああ!!」

 逆手に持ち直した正宗を投げ飛ばした。

 やり投げの要領で投擲された剣は、久道さんとの修行の甲斐あってまっすぐに飛翔する。≪アクセラレーター≫の加速を受けた正宗は数メートルの距離を瞬く間に翔け抜け、閉じかけていた穴へ滑り込むように吸い込まれ――

「飛ばせ!」

『承認。≪リンケージブリンク≫起動』

 ――視界が切り替わる。

 ≪リンケージブリンク≫は手放した武器を手元へ戻すため、携行型の次元兵器全般に組み込まれている機能。本来は所有者を基準点として、武器の方を転移させる。

 今回はその逆だ。正宗を基準に、俺の方を飛ばした。本家≪ブリンカー≫のようにその都度座標を計算・入力する必要がなく、遠距離からの強襲に使えないかと半月ほど前から練習していた技。

 乗り物酔いを強くしたような不快感を振り切り、現在位置を把握する。ビルの屋上か。景色からして、たぶんさっきまでいたところからそう離れていない。

 そして……これは何だ?

 手元には正宗の柄があるのに、刀身の半分以上が見えなかった。まるで空気に溶け込んでしまったかのように、完全に消失しているのだ。実際、消えた質量分だけ手に伝わっている重量も軽く感じる。

 だが関係ない。

 時間拡張は勝手に解け、視界が灼熱する。度重なる能力の乱用が祟ってか、時間停止の長時間使用に匹敵する痛み。遠くなりかけた意識へ発破をかけるように、下の方で爆発音が響く。

 迷ってる暇はない。

 あの穴を通過した正宗へ転移し、ここに飛ばされたのならば。

 奴は、ここにいる!

「はぁっ――!」

 不自然に軽い正宗。使えるのは片腕だけ。

 それでも出せる限りの全力で、思い切り地面へ向かって――振り抜く。

 手ごたえはない。ただ空振ったような虚しい余韻だけが残る……はずだった。


「――かはっ……!?」


 突如として足元から響いた声。

 空間へ滲み出るように姿を現す様は、いつの日か見た変異体が出現する瞬間に似ていた。

 屋上に叩きつけられた青年は小さくバウンドし、何度か転がった末に動きを止める。周囲にはバラバラになった武器の残骸が音を立てて散乱し、彼自身の右腕も不自然な方向に曲がっていた。

 起き上がってくる様子は……ない。気絶しているのだろうか。

 頭痛に耐えながら注意深く様子を窺っていると、不意に焼けるような痛みが生じた。

「ぐっ、ぁあ……俺も腕ふっ飛ばされてんだった……」

 忘れていた痛覚が甦り、そこへ更に能力の反動が重なり、たまらずその場にうずくまる。いつの間にか元の重量と見た目に戻っていた正宗が手から滑り落ちるが、拾う余裕はなかった。

 幸いと言うべきか、傷口は実際高温で焼けたらしく出血はそれほど酷くない。その分痛みは酷いが、生きている証拠だと前向きに捉えておく。

 それよりも心配なのはノインだ。

 弾丸の直撃からは助けられたが、その後に地面で発生した爆発も相当な威力だったはず。≪アブゾーバー≫もあるし生きていると思いたいが、下手をすればそっちの治療を優先しなくてはならないかもしれない。

 しかし、俺の心配は杞憂に終わった。

「ハルチカ、無事!?」

 俺の位置情報を追ってきたのだろう。中からビルを駆け上がってきたノインが息を切らしながら屋上に現れる。

 全身が煤けているが、目立った外傷はないようだ。彼女のことだし、うまく爆風をやり過ごしたのだろう。

「何とか、な。ノインも大丈夫そうでよかっ、た……」

 無事を喜ぼうとした俺だったが、彼女が抱えているものを見て絶句する。

「……何で俺の腕持ってるの?」

「持ってきた方が早く治ると思った」

「まあ、うん……ありがとうな」

 ぶっちゃけ誤差レベルだとは思うが、気遣いはありがたかった。

 しかし自分の腕が他人に抱えられてるって……ショックよりシュールさを感じてしまうのは現実味がないからだろうか。

 ともかく頭痛がある程度引くのを待ってから、千切れた腕をくっつけた。焼けた断面が戻る瞬間からは流石に目を逸らし、何度か手を握り開きして違和感がないか確かめる。

 そうしていると、ノインが散らばった武器の破片の一つを拾い上げ目を細めた。

「≪アクセラレーター≫に使用されている加速モジュール。やはり予想通りだった」

「あぁ。あの穴は……あいつの能力は≪転移ゲート≫だったんだ」


 崩落したビルで俺が狙撃を受けた際に見つけた空中の穴。あれを見た時に感じた既視感について、ノインはすぐさま答えを出してくれた。

 俺たちが東京へ来る際に潜った≪転移ゲート≫も、フレーム内は真っ暗で先が見えなくなっていた。空間の継ぎ目における光の屈折率が関係しているらしいが、俺もノインも詳しくは理解していない。

 ただ、この特徴はどちらにも共通している。そしてこれこそが、俺たちが青年の行動に感じていた違和感の裏付けにもなった。

 直接対象を移動させる≪ブリンカー≫と違い、≪転移ゲート≫は展開した穴を潜る必要がある。俺たちの前からいなくなった時にビルを飛び降りたのは、その先にゲートを展開していたからだろう。潜る瞬間さえ見られなければ、能力の詳細を曖昧にできる。

 この能力は攻撃にも利用されていた。

 彼が持っていた武器は≪スマートライフル≫と少し似ていたが、弾を撃ち出すのに加速装置を用いる点が大きく異なる。ノイン曰く、≪スマートライフル≫の前身として開発された次元兵器の中に似たような物があったそうだ。

 銃口が存在していないのはそもそも必要がないからであり、銃身内を真空に保つため。

 真空――空気抵抗ゼロの空間内であれば、弾丸は摩耗することがない。ゲートで銃身の両端を繋げばループの完成だ。無限の助走距離を得た弾丸は、際限なく加速する。

 そして膨大な運動エネルギーが蓄積された弾丸は、ゲートによって任意の位置から射出される。目標の直近に開けば、エネルギー損失がほぼない超威力のゼロ距離射撃。天蓋やビルを破壊したのは多分これ。俺を撃った時にこの威力が出なかったのは、加速時間が足りなかったのだろう。

 ゲートを開き、空間を飛び越える力。

 俺たちで導き出した、青年の能力の正体だ。


「もし≪ブリンカー≫と同じ仕様だったらと思うとゾッとしないぜ」

「同感。≪転移ゲート≫の方で助かった」

 非常に強力な能力であることは間違いなかったが、ゲートならではの弱点がいくつかある。

 まずその使用上、転移の直前には必ずゲートが出現する。出てから消えるまでは恐ろしく速いようだが、自分で言うのもなんだが相手が悪かった。意識を加速すれば、転移の前兆として空中の穴を捉えられたからだ。

 それにゲートは真っ暗だから、入り口側から出口側の様子を窺うことができない。正確な狙いをつけるためには、展開するゲートが目視できる場所――つまりはターゲットの近くまで寄る必要がある。

 最大の欠点は、ゲートが一方通行ではないこと。弾丸が出てきたゲートは、逆に言えば武器の銃口部分へと繋がっている。そして通過さえすれば、開いた本人の意思に関係なく向こう側へ移動できてしまう。声がノインに聞こえてしまったのもそのせいだ。

 故に、俺は何もない虚空に奴が存在していると確信できた。

 ゲートに呑まれた正宗は、ほぼ確実にあの銃を貫いていたのだから。

「ノインの予想と作戦が完璧に当たったな。お陰で助かった」

「実際に成功させたのはハルチカ。小官だけじゃ何もできなかった」

「なら二人とも頑張ったってことで……さて、あれをどうするかね」

 一通り互いに称えあってから、俺たちはうつぶせに倒れたままの青年へと向き直る。

 徹頭徹尾注意は向けていたが、未だに動く気配はなかった。

「……殺した?」

「ど、どうだろう。重さがなかったもんで、結構な勢いで叩きつけちまったが……」

「冗談。浅く背中が上下している。たぶん気絶」

「脅かさないでくれ心臓に悪い!」

 でもあの時は、半分以下になった正宗の重量以外には本当に何も感じなかった。ああして転がっていった以上、俺は確かに串刺しにした銃ごと青年を振り回したのだろう。

 目に見えないのはレーダーに映らない時点で薄々察してはいたが、あの手ごたえのなさ……まさか質量まで消えてたっていうのか?

「この世に一切痕跡を残さず消える力……とんでもねえな」

「考えうる限り最悪の組み合わせ。姿を消されたまま転移されたらどうしようもない」

 ノインの言う通りだ。

 もしこの一回で仕留めていなかったら、完全に手が付けられなくなっていた。

「さっさと拘束しちまおう。自由にゲート作れる相手に意味があるかはわからんけど」

「やらないよりはマシ」

「だな。気をつけろよ、狸寝入りかもしれない」

「わかってる」

 ≪タグ≫から手錠のようなものを取り出したノインが青年へ近づいていくのを、俺は少し後ろから見守っていた。僅かにでも不審な動きをすれば、即座に取り押さえるつもりだ。これ以上能力を使うのはきついが、相手も手負い。二人がかりなら何とか抑え込める。

 拘束し終わったら一旦久道さんを呼んでこいつを回収してもらおう。そうすれば……俺たちはルナリアたちの方へ応援にいける。

 ふと気が付けば、俺はいつの間にかルナリアたちがいるだろう方角を眺めていた。この距離では到底向こうの様子なんてわからないが、そうせずにはいられなかった。

「無事でいてくれよ……」

 返事のない無線を思い出すと、不安が冷気のように胸の内を這いまわる。

 反応がなかったのは、応える余裕がなかったのか。

 それとも、応えられる状態じゃなくなっていたのか。

「……えぇい、くそっ」

 脳裏を過ぎる、いくつもの最悪。

 それらを振り払うようにかぶりを振り、俺は見張りへと戻る。


 それは丁度。

 乾いた破裂音と共に、ノインが大きく弾き飛ばされたのと同時だった。

第二ラウンド開始

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