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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第五章 ナガレとサトル編

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第二二二話 魔獣の森での戦い~ピンチからの逆転~

「いきますよナリア!」

「任せてよナリヤ!」


 まさに瓜二つといった双子の姉妹。実際はその内の一人は既に他界しており、その為今ナリヤに返事をしたナリアは彼女の守護霊としてこの世に留まっている存在であるわけだが。

 

 だが、今彼女は何らかの力が働き常世へと実体化した状態で現出していた。そしてナリヤと一緒にヘルハウンドの相手をしている。

 

 ヘルハウンド四匹ともなると、通常であればAランクの冒険者でも苦戦する相手だ。単体で相手するなど以ての外だが、ふたりでも正直勝てる保証はなく、きっちりパーティーを組んだ上で何組かが協力しあって戦うようなレベルだろう。


 だが――このふたりは包囲してくる四匹のヘルハウンドを全く意に介していなかった。何せその連携が素晴らしく合っており、まるでお互いがお互いの手足のように技を振るい、触手を避け、剣戟を叩き込む。


「う~ん、やっぱりナリヤお姉ちゃんとは息が合うね! 心が通じ合っているみたいだよ!」

「まあ、元々双子でお互いのことはよく判っていましたからね」

「うん! そうだね! でもこの触手、何だか嫌らしいよね。捕まったらどんな事をされるか――」

「へ、変な事を戦闘中に考えるんじゃありません!」


 戦闘中にも関わらず随分と卑猥な事を考えるナリアにナリヤが叱咤する。やはり双子故かある程度思考は共有されているようでもある。


「う~ん、お姉ちゃん相変わらず初だよね~もしかしてまだ男性経験ゼロ?」

「よ、余計なお世話!」

「え~いいでしょ~それぐらい教えてくれたって。私達姉妹なんだし」

「姉妹だからと、なんでも話すというものではありません」

「ちぇっ、いいもん。お姉ちゃんの中覗いて――」

「や、ヤメなさい馬鹿! 何考えてるの!」


 中々仲の良い喧嘩が始まるふたりだが、当然この間も戦闘は続いており、迫る三二本の触手を危なげなく避けつつ、そして――


「そこっ!」

「やぁあぁあ!」


 ふたりが同時に飛び出し強力な突きをヘルハウンドに御見舞した。その一撃は見事ヘルハウンドの急所を捉え、一撃でその命が刈り取られる。


 すると仲間がやられ残りのヘルハウンドが後ずさり、闇に変化し逃亡を図るが。


「お姉ちゃんからみて七時の方に逃げたよ!」


 ナリアの声と流れ込んできた思考に従い、ナリヤがその方向に向けて剣戟を叩き込む。闇に変化するスキルは厄介だが、あまり長い距離を移動できないのと効果が途切れた直後には隙がある。


 そこを狙い撃った形だ。そしてナリアも同じく効果が切れた直後を狙って攻撃を仕掛け見事残りのヘルハウンドも討ち取った。


「う~んやっぱりふたりで組むと強いよね私達!」

「あまり浮かれない。でも上出来です。さあ、皆の方へ向かいましょう」


 こうして難なくヘルハウンドを排除したナリヤ&ナリアである。


 そして他のメンバーとの合流も果たすが、どうやらヘルハウンドは全員見事倒すことが出来たようであり。


「まさかこんなに上手くいくなんてね~」

「ま、先生の教えを受けたんだからこれぐらい当然ってことだな!」


 ピーチが感嘆の言葉を漏らし、鼻高々に声を上げるフレムである。


「でも、この後どうするの?」

「勿論、ナガレの後を追うわよ!」

「ナガレって、確か私を塩漬けにしてくれた方よね~会うの楽しみ~」

「へ? し、塩漬け?」


 あっけらかんと語るナリアに目をパチクリさせるローズである。唐突にそんな塩漬けの話をされてはそう思えるのは判らないでもないが。


「そこはまぁ、色々とありまして。ですがおかげでナリアの遺体は綺麗なままだったのですよ」

「うん! 私もびっくりだったよ~もうぴっかぴっか!」

「じ、自分の遺体をみたのね……」

「何かシュールだな……」

 

 話を聞き目を細めるピーチとフレムである。しかし自分の遺体を見ていた霊の話などそう聞けるものではないだろう。


「ま、でもこれでもうここに敵はいないしね。これ以上出てくることも無いでしょうからナガレの下へ向かいましょう!」

「……先輩、俺、今なんか凄い嫌な予感がしてきたんだけどな」

「何故か私もそうだな」

「虫の知らせって奴でしょうか」

「うん、でもそれは当たってるみたいだよ~すっごい囲まれてる」


 ナリアの話に、はぁ!? と声を上げるフレム、ピーチ、ローズである。

 そしてナリヤはすぐに周囲の気配に探りを入れた。このあたりの対応の速さは流石Aランクと言うべきか。


「こ、これは――ヘルハウンドもですが、他にも大量の魔物が……恐らく一〇〇体ほど」

「は、はぁ!? 一〇〇体!」

「なんだよここ、魔獣だけじゃないのかよ!」

「ま、魔獣がいると勝手に魔物が付き従うこともあると聞いたことがあるが、まさか一〇〇とは――」


 ローズの顔が強張った。正直魔獣と魔物が一〇〇体というのは多勢に無勢が過ぎるだろう。


「と、とにかくやるしかない!」

「来ます! 気を引き締めて掛かってください!」


 そして一斉に魔獣がピーチ達目掛けて襲い掛かってきた。その魔物は全て獣系であり、魔獣に関しては再びヘルハウンドが触手を伸ばしてくる。


「く、くそこれは流石に数が多すぎだぜ!」

「一人二〇とか無茶が過ぎるぞ!」

「あはは~触手がいっぱ~い」

「これは、確かに厄介ですね――」


 まさかここにきてこれだけの数が攻めてくるとは考えてなかったのか、一行にも焦りの色が滲んでいた。

 

 だが、そんな中、リーダーであるピーチは鉄球に変化させた杖で敵を払い除けつつ頭をフル回転させていた。


「ナガレが、出来ないことを任せるわけがない! そうよ、でも、どうすれば――」


 リーダーとしてこの場を私が何とかしないと、と必死に知恵を絞るピーチであったが――


「そうか! 一〇〇対五と考えるから駄目なのよ! ここは一〇〇対一なのよ!」

「――は? いや、何言ってるんだよ先輩?」


 それを耳にしたフレムが、この状況で何馬鹿なこと言ってるんだ? という目をピーチに向けた。

 だがピーチは、いいから! と声を大にして。


「皆で逃げるのよ! ナガレと森に来た時の事を思い出して! 一直線に並んで早く!」


 そしてピーチが突然そんなことをいい出した。それに目を丸くさせる四人であったが、必死に促してくるその様子に――


「とにかく、言うとおりにしてみよう。どっちにしろこのままじゃジリ貧だ」

「判ったよ先輩! 信じてみるぜ!」

「ナリア――」

「うん! 行こうお姉ちゃん!」


 そしてピーチを先頭に一行は敵の集団に背を向けて逃げ始める。

 

 だが、当然だが一行を獲物と判断した一〇〇の群れは逃さまいと後ろから追いかけてきた。


「お、おい、追ってきたぞ!」

「だ、大丈夫なのか?」


 フレムとローズの質問。だがピーチは無言で目の前の木々を今度は斧と化した杖で次々と薙ぎ払いながらとにかくまっすぐ突き進んだ。


「う~ん、ピーチちゃんが前を行っているおかげで進みやすいのはいいけど」

「はい、これだと魔物や魔獣も追ってきやすくなってますが、もしかして――」


 そこまで言ったところでナリヤが何かを思いついたように顎を押さえた。

 そして前を行くピーチもこれでいいの! と声を上げ。


「よっしそろそろいいわね!」


 そう言ってピーチは杖を元の形状に戻し、そして急に動きを止め全員を振り返り。


「皆、左右に散って! ぶっといの撃ち込んでやるんだから!」

「ぶっとい、そうか!」

「え? 何を言っているのだ?」

「いいからローズも早く避けて!」

「太くて凄いのが飛び出すのね!」


 そしてピーチは杖に魔力を込め、その力が先端に集束していく。しかも杖が新調されたことで魔力が溜まるまでの時間も相当に早まっていた。


「いっくわよーーーー! 魔杖爆砲ーーーー!」

 

 そして、ピーチの手により最大の技が発動される。杖の先端に込められた魔力が桃色の強大な光線と化し一直線に駆け抜けた。


 そう、ピーチ達はピタリとくっついた状態で敵から逃げ続けた。しかもピーチが自ら道を切り開いた影響で、背後から狙ってくる一〇〇体の群れも淀みなく、そして自然と直線状に並び列となって迫ってくることとなる。


 そこへピーチによる魔力の奔流が一気に襲い掛かってきたのだ。直線状に並んでいた魔獣や魔物にはこれを避ける余裕などあるはずもなく――


 凄まじい轟音と削れる大地。光の帯は余すことなく魔物の群れを全て飲み干し――そしてその命を全て洗い流した。


「ふぁああぁああ、や、やったわ~~」


 大きく息を吐きだしそのままぺたんと地面に腰をつけるピーチ。そして直線状に転がる骸に目を丸くさせるフレムでもある。


「う~ん、まさかここまでとは。威力なら先輩には全然勝てねぇな。クソぅ!」


 そして悔しそうに声を漏らすフレムでもある。


「……なんなのだこれは――これではまるで強力な魔導砲のようではないか……滅茶苦茶だな……」

「ですが、ピーチ様のおかげで助かりましたね」

「うん! 女の子なのにあんなに太くて逞しいの凄いよ!」

「……ナリア、言い方――」


 額に手を当て嘆くように呟くナリヤでもある。

 とは言え、これで脅威は完全に去った。ピーチも疲れてはいるがやり遂げた感をその顔に貼り付けている。


『ほう、あれだけの相手を倒すとは人間にしてはやるではないか』


 だが、その時上空から何者かの声が一向に降り注ぐ。ピーチを含めた面々はぎょっとした顔で上空を見上げた。


「そ、そんなあれは、魔獣マンティコア!」

「ここにきてよもや大型種の魔獣とは――」

「しかも、あれ確かSランクでないと太刀打ちできない相手だよねぇお姉ちゃん」

「そ、そんなぁ、私もう殆ど魔力残ってない――」


 全員の顔色が変わる。そんな面々を見下ろしながらマンティコアが醜悪な顔を更に歪めた。

 マンティコアは獅子の身体と獅子の如き鬣、しかしその顔は人間の老人を思わす様相の大型の魔獣だ。しかも背中には大きな翼を備え、人語を理解し数多くの魔法を操る。空を自在に飛び回り、巨大な鉤爪で地上の敵を引き裂くことも可能だ。


 レベルも二〇〇近い魔獣であり、疲弊しきった一行ではあまりに分が悪いといえるだろう。


「冗談じゃねぇ! お前らも諦めるな! どんな相手だって、倒せないなんてことはないはずだぜ!」


 だが、フレムは意志の篭った双眸でマンティコアを睨めつけ堂々と言い放つ。


 すると、マンティコアは、がはは、と笑い声を上げ。


『威勢だけは良いな矮小な人間よ。だが、調子にのるなよ? 我をあのような頭の弱い魔物やヘルハウンドなどと一緒にしないことだ。さぁ! 今すぐ目にもの見せてや、グギャアァアアァアアァア!』


 だが、自信満々に高説をたれ流すマンティコアの身を、飛来した刃が切り裂き、貫き、そして最後に巻き付いて締め付けた後引き抜かれバラバラに引き裂いた。

 

 その様相に、フレムを含めポカーンとした顔を見せる一行であり。


「……うるさい、うざい、鬱陶しい――」


 そして、ピーチとフレムには見慣れた褐色の彼女が姿を見せた――

マンティコアさんの出番はこれで終わり、でっす!

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