↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昭和十六年の日本国  作者: 秋雲 榛名


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
94/166

七 停戦の条件


翌朝、会議場の机には新しい文書が置かれていた。

 表題は「局(・)地(・)的(・)戦(・)闘(・)停(・)止(・)に(・)関(・)す(・)る(・)予(・)備(・)的(・)取(・)決(・)め(・)案(・)」。

 内容は、決して単純ではなかった。

 日本軍と中国軍が接触している地域を指定し、双方が一定期間、攻勢的な軍事行動を控える。

 捕虜の処遇を確認する。

 負傷者の収容を認める。

 民間人の避難経路を確保する。

 違反が発生した場合には、共同の連絡機関を通じて事実関係を調査する。

 文書を読んだ宋子文は、すぐに問題点を指摘した。

「攻勢的な軍事行動とは、どこまでを指しますか」

 昭和日本の軍事代表が答えた。

「新たな地域の占領を目的とする行動です」

「偵察は?」

「必要な範囲で継続します」

「その偵察が、攻撃の準備だと判断されたら?」

 軍事代表は、返答に困った。

 周恩来が発言した。

「補給部隊の移動はどう扱うのですか」

「通常の補給は認めるべきでしょう」

「その補給物資が弾薬であっても?」

 議論は、また振り出しに戻りかけた。

 真壁は、机の上の地図を見た。

「完全な停戦を一度に実現するのは難しいと思います」

 宋が顔を上げた。

「では、どうするのですか」

「まず、戦闘が比較的少ない地域から始めるべきです」

 真壁は、いくつかの地域を指した。

「双方が監視できる範囲を限定し、違反が起きた場合には即座に連絡を取る」

 周は、少し考えた。

「その連絡機関には、我々も参加できるのですか」

「当然です」

 宋が口を開いた。

「中国国民政府の権限を損なわない形であれば、検討できます」

 周は、宋を見た。

「その条件については、後ほど協議しましょう」

 榊原は、二人のやり取りを聞きながら、ようやく話が前へ進み始めたと感じた。

 しかし、最も難しい問題は残っていた。

 日本軍が撤退するのか。

 撤退するとして、どこまで、いつまでに。

 その問題について、昭和日本政府はまだ正式な決定を下していなかった。

 京都の会議場で合意できても、東京の政府が認めなければ意味はない。

 まして、中国大陸に展開する部隊が命令に従わなければ、文書は紙切れになる。

 榊原は、真壁を見た。

「大佐。現地軍を統制できますか」

 真壁は、すぐには答えなかった。

「命令を伝えることはできます」

「従わせることは?」

 真壁は、榊原の目を見た。

「努力するしかありません」

 その答えは、頼りなく聞こえた。

 しかし、真壁には、それ以上のことを約束する資格がなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。