十三 戦争を終わらせるために
一月二十日。
京都会議の前日。
各国の代表団が、京都へ到着し始めた。
昭和日本の代表団。
未来日本の代表団。
中国国民政府の代表団。
そして、中国共産党側の連絡員。
会議は、正式な和平条約を結ぶものではなかった。
あくまで、戦争終結に向けた予備協議だった。
しかし、その意味は大きかった。
日中戦争が始まって以来、双方は長く戦い続けてきた。
その戦争を終わらせるために、初めて未来日本が仲介する形で本格的な協議が行われようとしていた。
榊原直人は、会場の控室で資料を確認していた。
外務大臣が入室した。
「総理。中国国民政府の宋子文氏が到着しました」
「分かりました」
「昭和日本の代表団も、間もなく到着します」
榊原は頷いた。
外務大臣は、少し間を置いて言った。
「総理」
「何です」
「今回の会議は、非常に難しいものになると思います」
「分かっています」
「双方とも、長年の犠牲を背負っています」
榊原は、資料を閉じた。
「だからこそ、簡単に妥協できないのでしょう」
外務大臣は頷いた。
「はい」
榊原は、窓の外を見た。
京都の街には、冬の夕暮れが訪れていた。
寺院の屋根が、薄い夕日に照らされている。
遠くでは、鐘の音が聞こえた。
榊原は、静かに言った。
「明日、戦争が終わるわけではありません」
外務大臣は黙っていた。
「しかし、明日、戦争を終わらせるための最初の一歩を踏み出すことはできる」
榊原は、立ち上がった。
「行きましょう」
外務大臣は頷いた。
二人は、控室を出た。
廊下には、昭和日本と未来日本の警備員が並んでいた。
同じ日本語を話しながら、異なる時代を生きてきた人々だった。
しかし、今は同じ目的のために働いていた。
戦争を終わらせる。
その目的が、どれほど困難なものかを、誰もが理解していた。
それでも、進むしかなかった。




