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昭和十六年の日本国  作者: 秋雲 榛名


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十四 妻への電話


十二月二十四日。

 未来日本の病院で、三浦隆文は妻と再会した。

 由紀子は、病室へ入るなり夫の顔を見つめた。

 何か言おうとしたが、言葉が出なかった。

 三浦は、ベッドの上で少し笑った。

「ただいま」

 由紀子は、夫の肩を叩いた。

「何が、ただいまよ」

 声が震えていた。

「どれだけ心配したと思ってるの」

「ごめん」

「連絡もなく、三日も帰ってこなくて」

「本当に、ごめん」

 由紀子は、しばらく夫を見つめていた。

 それから、椅子に腰を下ろした。

「怪我は?」

「少し煙を吸っただけだよ」

「本当に?」

「医者がそう言ってる」

 由紀子は、ようやく息を吐いた。

 窓の外には、冬の空が広がっていた。

 病院の敷地には、節電のため一部の照明が消されていた。

 三浦は、妻の手を取った。

「誕生日、過ぎちゃったな」

 由紀子は、少し笑った。

「覚えてたの?」

「忘れるわけないだろう」

「去年は忘れてたじゃない」

「去年は……」

 三浦は、言葉に詰まった。

 由紀子は笑った。

 そして、夫の手を握り返した。

「もういいから」

 少し間を置いた。

「帰ってきてくれたんだから」

 三浦は、窓の外を見た。

 自分が持っている知識を欲しがる人間がいる。

 それは、今回の事件ではっきりした。

 未来日本の技術は、単なる研究成果ではなくなっている。

 国家の運命を変えるための道具として、各国が求め始めている。

 三浦は、妻の手を握りながら考えた。自分は、これからも研究を続けられるのだろうか。

 それとも、研究をすること自体が、危険な行為になってしまうのだろうか。

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