八 行方を追う
真壁と小野寺は、神谷の足取りを調べ始めた。
最初に訪れたのは、神谷が最後に姿を見せたとされる軍関係者の宿舎だった。
管理人の老人は、神谷について尋ねられると、少し考えた。
「三日ほど前に、お見かけしました」
「一人でしたか」
真壁が尋ねた。
「いいえ。若い兵隊さんが二人、一緒でした」
「車は」
「黒い車でしたな」
小野寺が写真を見せた。
「この車でしょうか」
老人は、眼鏡をかけ直した。
「似ています」
「どちらへ向かいましたか」
「それは分かりません。ただ……」
老人は、少し考えた。
「茨城の方へ行くとか、そんな話をしていたような」
真壁は、小野寺を見た。
「茨城か」
小野寺は手帳に書き込んだ。
「何か心当たりがありますか」
「陸軍の旧施設がいくつかあります」
真壁は、少し考えた。
「そのうち、人目につかない場所となると……」
真壁は、机の上の地図を広げた。
茨城県南部。
山間部。
旧補給施設。
訓練場。
いくつか候補があった。
小野寺は、その一つを指した。
「ここは?」
真壁は、地図を見た。
「旧資材保管所です」
「今は使われていない?」
「正式には」
小野寺は、真壁を見た。
「正式には、ということは」
「軍には、書類に載らない使い方をされている施設もあります」
小野寺は頷いた。
「調べる価値はありますね」
真壁は、少し考えた。
「ただし、武装した兵がいる可能性があります」
「承知しています」
「危険です」
小野寺は、真壁を見た。
「三浦さんも、危険な場所にいるかもしれません」
真壁は、しばらく黙っていた。
そして頷いた。
「分かりました」




