↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昭和十六年の日本国  作者: 秋雲 榛名


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/160

六 未来日本の捜査官


十二月二十二日。

 未来日本の警察庁から、昭和日本との共同捜査を担当する職員が派遣された。

 名は小野寺美咲。

 三十四歳。

 警察庁の警備部門で勤務していたが、時空間異常の発生以降、昭和日本との連絡業務に従事していた。

 真壁は、東京の陸軍省で彼女を迎えた。

 小野寺は、紺色の背広に白いシャツを着ていた。

 軍服姿の男たちが行き交う建物の中では、その姿はひどく目立った。

「真壁宗一郎大佐ですね」

「そうです」

「小野寺美咲です。よろしくお願いいたします」

 小野寺は名刺を差し出した。

 真壁は、少し戸惑いながら受け取った。

「こちらこそ」

 名刺には、所属と連絡先が印刷されていた。

 真壁は、その紙質の良さに少し驚いた。

「未来日本では、女性も警察官になるのですか」

「はい」

「珍しいことではない?」

「珍しくありません」

 真壁は頷いた。

「そうですか」

 小野寺は、真壁の反応を観察していた。

 昭和日本の軍人は、未来日本の女性職員をどう扱うのか。

 出発前、同僚からさまざまな忠告を受けていた。

 しかし、真壁は特に驚いた様子もなく、彼女を会議室へ案内した。

「三浦さんの件について、こちらで確認できたことをお伝えします」

 小野寺は鞄から資料を取り出した。

「研究所を訪れた二人のうち、一人は神谷修一少佐と見られています」

「承知しています」

「もう一人は、身元が分かっていません」

「ドイツ人の可能性は」

「あります。ただし、断定はできません」

 小野寺は写真を広げた。

「研究所の駐車場で確認された車両です」

 真壁は、写真を見た。

 昭和日本の車両だった。

 車体の形状から、軍用車を改装したものと思われた。

「この車両が、研究所を出た後、どこへ向かったかは分かりません」

「未来日本の道路には、監視する装置があるのでしょう」

「防犯カメラや道路上の記録装置があります。ただ、すべての道路を確認できるわけではありません」

 真壁は頷いた。

「なるほど」

 小野寺は続けた。

「三浦さんは、家族を残しています」

 真壁は顔を上げた。

「奥様がいらっしゃる?」

「はい。娘さんも一人。高校生です」

「そうですか」

 小野寺は、真壁を見た。

「私たちは、彼を生きたまま取り戻したいと思っています」

 真壁は、静かに頷いた。

「私も同じです」

 小野寺は、少し間を置いた。

「大佐は、神谷少佐をご存じなのですね」

「以前から」

「どんな人物ですか」

 真壁は、少し考えた。

「頭の切れる男です」

「それだけですか」

「自分の考えが正しいと思い込むと、周囲の意見を聞かなくなる」

「危険ですね」

「ええ」

 真壁は、窓の外を見た。

「しかし、神谷だけが特別なのではありません」

 小野寺は黙って聞いていた。

「我々の時代には、同じような考えを持つ軍人が大勢います」

 真壁は続けた。

「国家のためなら、多少の犠牲は仕方がない。目的が正しければ、手段も許される」

 小野寺は、静かに言った。

「私たちの時代にも、そういう考え方をする人はいます」

 真壁は、彼女を見た。

「そうですか」

「はい」

 小野寺は、少し笑った。

「八十五年たっても、人間はそれほど変わっていないのかもしれません」

 真壁も、わずかに笑った。

「それは、残念な話ですな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。