六 ベルリンからの電報
ドイツ国ベルリン。
十二月九日。
ドイツ外務省には、日本から届いた報告が次々と集まっていた。
未来日本の出現。
真珠湾攻撃の中止。
米国との偶発的な交戦。
そして、未知の軍事技術。
リッベントロップ外相は、報告書を読みながら眉をひそめた。
「日本は、何をしているのだ」
側近が答えた。
「未来日本との交渉を優先しているようです」
「未来日本などというものが、本当に存在するのか」
「複数の情報源が確認しております」
リッベントロップは、写真を手に取った。
そこには、現代の戦闘機が写っていた。
流線形の機体。
奇妙な翼。
見たこともない兵装。
「これは、米国の新型機ではないのか」
「未来日本の航空機だとされています」
「性能は」
「不明です。ただ、現在の航空機を大幅に上回る可能性があります」
リッベントロップは、写真を机に置いた。
「総統に報告せねばならん」
その日の午後、ドイツ政府は日本政府に正式な照会を行った。
未来日本との接触を求める。
未来日本の軍事技術に関する情報提供を求める。
そして、未来の戦争に関する資料の共有を求める。
東條は、その電報を読んで、しばらく黙っていた。
「ドイツは、未来を知りたいらしいな」
真壁が答えた。
「当然かと存じます」
「なぜだ」
「勝つためです」
東條は頷いた。
「そうだろうな」
真壁は続けた。
「しかし、未来日本がドイツへ敗戦の記録を渡せば、ドイツはそれを変えようとするでしょう」
「それで何が悪い」
真壁は、少し考えた。
「ドイツが敗戦を避けようとすれば、戦争はさらに長引くかもしれません」
東條は、真壁を見た。
「未来日本は、ドイツの敗北を知っているのか」
「そのようです」
「ならば、ドイツにとっては重大な情報だ」
「はい」
東條は、窓の外を見た。
「未来の知識は、誰に渡すかによって意味が変わるのだな」
真壁は頷いた。
「その通りです」
東條は、電報を机に置いた。
「未来日本には、慎重な対応を求めよう」




