十一 ワシントンの夜
アメリカ合衆国。
ワシントンD.C.。
ホワイトハウスでは、ルーズベルト大統領が、日本から届いた報告を読んでいた。
太平洋で日本海軍と米軍が交戦した。
しかし、日本政府は真珠湾攻撃を中止した。
さらに、日本の東方に未知の国家が現れたという。
その国家は、八十五年後の日本を名乗っている。
ルーズベルトは、報告書を机に置いた。
「まるで小説だな」
側近は笑わなかった。
「大統領、情報機関は存在を確認しています」
「未来の日本を?」
「はい」
「どの程度、信頼できる」
「少なくとも、未知の航空機と艦艇が存在することは確かです」
ルーズベルトは、しばらく考えた。
「彼らは何を望んでいる」
「戦争の回避です」
「日本との?」
「はい」
ルーズベルトは、椅子の背にもたれた。
「奇妙だな」
「何がでしょう」
「未来の日本は、我々に戦争をさせたくないらしい」
「そのようです」
「ということは、未来では戦争が起きたのだろう」
側近は頷いた。
「そして、おそらく日本は負けた」
ルーズベルトは、窓の外を見た。
「では、我々は勝ったのか」
誰も答えなかった。
「勝ったとして、その後はどうなったのだろうな」
ルーズベルトは、ゆっくりと言った。
「未来の日本が、我々の敵ではなく、友人になっている可能性もある」
側近が驚いた顔をした。
「日本が、ですか」
「なぜ驚く」
「現在の関係を考えれば」
「現在の関係が、永遠に続くわけではない」
ルーズベルトは、報告書を手に取った。
「未来の日本に、正式な会談を申し入れよう」
「場所は」
「ハワイがよい」
側近は、少し戸惑った。
「ハワイですか」
「そうだ」
ルーズベルトは頷いた。
「日本とアメリカが戦争を始めるかもしれなかった場所で、戦争を避ける話をする」
そして、少し笑った。
「悪くないだろう」




