十四 東京への緊急連絡
五月十日、午前零時四十分。未来日本・東京。
首相官邸に、茨城県の研究施設で不審者が侵入したとの連絡が入った。
榊原直人は、緊急の報告を受けていた。
「研究員の三浦隆文さんが、施設内に取り残されている可能性があります」
担当者が説明した。
榊原は、顔を上げた。
「三浦さん?」
「はい。昨年十二月の誘拐事件の被害者です」
黒田統合幕僚長が、資料を確認した。
「警備部隊は?」
「現地警察が対応中です」
「侵入者の人数は」
「不明です」
榊原は、しばらく考えた。
「人命を最優先にしてください」
「承知しました」
「研究資料の保護も必要ですが、職員の安全が第一です」
黒田が頷いた。
「はい」
榊原は、窓の外を見た。
東京の夜は静かだった。
しかし、茨城県の研究施設では、何かが起きている。
ドイツ政府の要求を拒否してから、わずか十日。
その間に、ドイツの情報関係者クラウスが東京へ現れ、研究施設に関する資料を入手していた。
榊原は、黒田を見た。
「クラウスの所在は」
「確認中です」
「今回の事件との関係は」
「まだ分かりません」
榊原は、机の上の資料を閉じた。
「小野寺さんへ連絡を」
担当者が顔を上げた。
「小野寺警部補ですか」
「はい」
榊原は、静かに答えた。
「三浦さんの事件を知っている人です」
黒田が頷いた。
「すぐに手配します」
その夜、東京から茨城へ向けて、警察の車両が走り出した。
そして、昭和日本の東京でも、真壁宗一郎のもとへ緊急の連絡が届いた。
未来日本の研究施設に、何者かが侵入した。
その情報を聞いた真壁は、机の上の写真を見た。
フリードリヒ・クラウス。
眼鏡をかけた、四十代のドイツ人。
真壁は、電話を取った。
「未来日本側へ連絡してくれ」
「内容は」
「クラウスが関与している可能性がある」
真壁は、低い声で続けた。
「今度こそ、逃がすわけにはいかん」




