↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昭和十六年の日本国  作者: 秋雲 榛名


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
140/166

八 上海事件の真相

 

 四月二十八日、未来日本・東京。


 小野寺美咲は、佐伯和彦殺害事件の資料を読み返していた。

事件が起きたのは、昨年十二月二十七日。

佐伯は、上海のホテルで遺体となって発見された。所持していた電子機器は消えていた。

当時、佐伯は未来日本の通信関係者として働いていたが、時空間異常によって生活が不安定になり、外国の情報関係者へ資料を売ろうとしていたとみられている。

小野寺は、写真を机へ並べた。

佐伯の宿泊していたホテル。

事件当日の廊下。

遺体が発見された部屋。

そして、現地警察が作成した報告書。

ヴェーバーの証言によれば、電子機器は中国人の仲介人を通じて購入したという。

しかし、その仲介人が佐伯を殺害したのかどうかは分からない。

小野寺は、別の資料を取り出した。

そこには、フリードリヒ・クラウスというドイツ人の写真があった。

未来日本の情報機関が、昭和日本側から提供された資料をもとに確認した人物だった。

写真には、眼鏡をかけた四十代の男が写っていた。

小野寺は、その顔を見つめた。

工藤和也が証言した「博士」と呼ばれていたドイツ人。

ヴェーバーが名前を挙げた科学技術情報関係者。

そして、満洲の八咫烏計画に関与していた可能性のある人物。

すべてが同一人物である可能性があった。

小野寺は、真壁宗一郎へ連絡を取った。

電話がつながると、真壁の声が聞こえた。

「真壁です」

「小野寺です」

「どうしました」

「確認したい人物がいます」

「誰ですか」

「フリードリヒ・クラウス」

電話の向こうが静かになった。

「その名前を、どこで」

「上海から来たドイツ人の証言です」

真壁は、しばらく黙った。

「こちらでも、その名前が出ています」

小野寺は、顔を上げた。

「どこからですか」

「満洲の研究資料です」

真壁は続けた。

「ドイツ語の書き込みがある資料が見つかりました。片岡少佐が調べたところ、クラウスという人物が研究に関与していた可能性があるそうです」

小野寺は、机の上の写真を見た。

「その人物の所在は?」

「不明です」

小野寺は、少し考えた。

「真壁さん」

「はい」

「この事件、まだ終わっていませんね」

真壁は、静かに答えた。

「ええ」

電話が切れた。

小野寺は、写真を封筒へ戻した。

上海で殺された佐伯和彦。

未来の資料を持ち出した工藤和也。

関東軍の野村清隆。

ドイツの情報関係者クラウス。

それぞれ別の場所で起きた事件が、一人の人物を中心につながり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。