十三 ドイツの最後通告
四月十日、ベルリン。
ドイツ政府は、未来日本と昭和日本に対して新たな外交文書を送った。
内容は、未来日本の軍事技術に関する情報提供を求めるものだった。
特に、航空機、通信技術、原子核研究について、正式な協力協定を締結するよう要求していた。
文書には、日独伊三国同盟に基づく協力の必要性が強調されていた。
しかし、未来日本は三国同盟の締約国ではない。
昭和日本も、米国との戦争を回避し、中国との停戦協議を進めている。
ドイツ政府は、その変化に強い不満を抱いていた。
東京のドイツ大使館では、大使オイゲン・オットーが文書を読み、深いため息をついた。
彼は、ベルリンの指示が外交上の問題を生むことを理解していた。
未来日本に対して、三国同盟を根拠に技術協力を要求することには無理がある。
しかし、ベルリンの命令に逆らうこともできなかった。
オットーは、秘書官へ命じた。
「未来日本の外務省へ、会談を申し入れてくれ」
「承知しました」
「ただし、文書の表現は少し柔らかくする」
秘書官が顔を上げた。
「ベルリンの指示と異なりますが」
「そのまま渡せば、交渉は始まる前に終わる」
オットーは、疲れた顔で答えた。
同じ頃、ベルリンではヒトラーが東部戦線の地図を見つめていた。
未来の歴史を変えるためには、何が必要なのか。
彼は、強力な兵器と新しい技術が必要だと考えていた。
しかし、未来日本の出現が世界にもたらした変化は、兵器だけではなかった。
日本が米国との戦争を回避したことで、ドイツの外交環境は史実とは異なるものになりつつある。
中国との停戦が進めば、日本軍の戦略も変わる。
そして、未来日本が米国や英国と協力を深めれば、ドイツはさらに孤立する可能性があった。
ヒトラーは、そのことを認めようとしなかった。
「日本人は、我々を裏切るつもりか」
彼は側近へ尋ねた。
側近は、慎重に答えた。
「まだ、そのような判断はできません」
「ならば、早く確認しろ」
ヒトラーは、机を叩いた。
「未来日本が我々の敵になるのなら、相応の対応を考えねばならん」
その言葉は、やがて東京へ伝えられることになる。




