八 昭和天皇への上奏
三月二十一日、昭和日本・帝都東京。
東條英機は、昭和天皇へ八咫烏計画に関する報告を行っていた。
東條は、関東軍の一部が政府の命令に従わず、原子力兵器に関する研究を継続している可能性があることを説明した。
昭和天皇は、静かに聞いていた。
「その研究は、どのようなものなのか」
東條は、慎重に答えた。
「未来日本の科学技術資料を利用し、原子核のエネルギーを兵器へ応用しようとするものであります」
「それほど強力な兵器なのか」
「未来日本の歴史では、一発で都市の広い範囲を破壊したとされています」
昭和天皇は、しばらく黙っていた。
「多くの人が死ぬのだな」
「はい」
東條は、頭を下げた。
昭和天皇は、静かに続けた。
「そのような兵器を作ることが、本当に国を守ることになるのか」
東條は、すぐには答えられなかった。
「陛下。軍事上の必要性を主張する者もおります」
「しかし、政府の命令に従わず研究を進めているのだろう」
「そのとおりであります」
「それでは、国の方針が定まらぬ」
東條は、深く頭を下げた。
「申し訳ございません」
昭和天皇は、しばらく考えた。
「未来日本は、その兵器を持っているのか」
「保有しておりません。ただし、核兵器の歴史と技術について多くの知識を持っております」
「そうか」
昭和天皇は、静かに言った。
「未来を知る者が、その兵器を作ることに慎重であるなら、理由をよく聞くべきではないか」
東條は、頭を下げた。
「仰せのとおりであります」
上奏を終えた東條は、官邸へ戻る車の中で考え続けた。
帝国は、未来の敗北を知った。
その結果、真珠湾攻撃を中止し、米国との戦争を回避した。
中国との停戦交渉も始まっている。
しかし、軍の一部は依然として強大な兵器を求めている。
未来の歴史を変えるために、未来の兵器を作ろうとしている。
東條は、窓の外を見た。
東京の街には、夕暮れが近づいていた。
彼は、秘書官へ命じた。
「関東軍への監察を強化する。必要なら、関係者の更迭も検討する」
「承知しました」
「それから、未来日本の榊原首相へ連絡を取れ」
「内容は」
「京都宣言について、正式に協議したい」
秘書官は、驚いた顔をした。
「総理。帝国として参加されるのですか」
東條は、少し考えた。
「まだ決めておらん」
そして続けた。
「だが、話を聞かずに拒む理由もない」




