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藍色吐息  作者: 久遠 ヒカリ


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8/20

第八話 ゲームの中なら

――風原藍斗視点


 昔から人付き合いは得意じゃなかった。


 嫌いではない。


 ただ。


 どう接すればいいか分からない。


 だから。


 気付けば一人でいることが多かった。


 高校に入っても同じだった。


 はずだった。


◇◇◇


『こんばんは』


『こんばんはー!』


 モニターの向こう。


 ユズが笑う。


 いや。


 立花柚月が笑う。


 それだけで嬉しい。


 そんな自分に気付いたのはいつだっただろう。


 たぶん。


 かなり前からだ。


『アイトー!』


『なに?』


『助けてー!』


『また迷子?』


『違う!モンスター多い!』


『どっちもだと思う』


『ひどい!』


 画面の向こうで騒ぐ彼女に思わず笑う。


 学校ではできない。


 ゲームの中だからできる。


 不思議だった。


 現実では何を話せばいいか分からないのに。


 ゲームでは自然に話せる。


 自然に笑える。


 自然に一緒にいたいと思える。


『アイト?』


『うん』


『どうしたの?』


『なんでもない』


 本当は違う。


 なんでもなくない。


 君が好きだ。


 でも。


 そんなこと言えるわけがない。


 もし今の関係が壊れたら。


 それが怖かった。


◇◇◇


 ある日。


 クラスの男子が言った。


「風原って立花さん好きだろ」


 心臓が止まりそうになった。


「違う」


「絶対好きじゃん」


「違う」


「顔真っ赤」


「違う」


 説得力は皆無だった。


◇◇◇


 帰宅後。


 ゲームへログインする。


 すると。


『アイトー!』


 いつもの声。


 いつものチャット。


 それだけで安心する。


「……重症だな」


 誰もいない部屋で呟く。


 窓の外には夜空。


 藍色の空。


 彼女の名前にも似た色。


 そして。


 気付いてしまう。


 自分がもう後戻りできないくらい。


 彼女を好きになっていることを。


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