第八話 ゲームの中なら
――風原藍斗視点
昔から人付き合いは得意じゃなかった。
嫌いではない。
ただ。
どう接すればいいか分からない。
だから。
気付けば一人でいることが多かった。
高校に入っても同じだった。
はずだった。
◇◇◇
『こんばんは』
『こんばんはー!』
モニターの向こう。
ユズが笑う。
いや。
立花柚月が笑う。
それだけで嬉しい。
そんな自分に気付いたのはいつだっただろう。
たぶん。
かなり前からだ。
『アイトー!』
『なに?』
『助けてー!』
『また迷子?』
『違う!モンスター多い!』
『どっちもだと思う』
『ひどい!』
画面の向こうで騒ぐ彼女に思わず笑う。
学校ではできない。
ゲームの中だからできる。
不思議だった。
現実では何を話せばいいか分からないのに。
ゲームでは自然に話せる。
自然に笑える。
自然に一緒にいたいと思える。
『アイト?』
『うん』
『どうしたの?』
『なんでもない』
本当は違う。
なんでもなくない。
君が好きだ。
でも。
そんなこと言えるわけがない。
もし今の関係が壊れたら。
それが怖かった。
◇◇◇
ある日。
クラスの男子が言った。
「風原って立花さん好きだろ」
心臓が止まりそうになった。
「違う」
「絶対好きじゃん」
「違う」
「顔真っ赤」
「違う」
説得力は皆無だった。
◇◇◇
帰宅後。
ゲームへログインする。
すると。
『アイトー!』
いつもの声。
いつものチャット。
それだけで安心する。
「……重症だな」
誰もいない部屋で呟く。
窓の外には夜空。
藍色の空。
彼女の名前にも似た色。
そして。
気付いてしまう。
自分がもう後戻りできないくらい。
彼女を好きになっていることを。




