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藍色吐息  作者: 久遠 ヒカリ


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第七話 文化祭と、届かない距離

 九月。


 夏休みが終わり、学校は文化祭準備一色に染まっていた。


「メイド喫茶やりたい人ー!」


「お化け屋敷だろ!」


「いや、脱出ゲーム!」


 教室は朝から騒がしい。


 そんな中。


 私は黒板の前で腕を組んで悩んでいた。


「どれも楽しそうだなぁ……」


 すると。


「立花さんはどれがいい?」


 隣から声がした。


 風原くんだ。


「え?」


「文化祭」


「あー」


 私は少し考える。


「脱出ゲームかな」


「理由は?」


「ゲームみたいだから!」


 即答だった。


 すると。


 風原くんが小さく笑った。


 その笑顔を見た女子達がざわつく。


 しかし本人は気付いていない。


「じゃあ僕も賛成」


「本当に?」


「うん」


 その結果。


 クラスの出し物は脱出ゲームに決定した。


◇◇◇


 準備期間が始まった。


 段ボール。


 絵の具。


 仕掛け作り。


 毎日放課後まで残る。


 自然と一緒にいる時間も増えた。


「風原くん器用だね」


「そう?」


「その鍵ギミック完璧じゃん」


「ゲームで似たようなの見たから」


「ゲーム万能説」


 思わず笑う。


 彼も少し笑う。


 最近気付いた。


 風原くんは笑うと年相応なのだ。


 普段の大人びた雰囲気が少しだけ消える。


 それを知っているのは。


 たぶん私くらい。


 そう思うと。


 少しだけ嬉しかった。


◇◇◇


 文化祭当日。


 脱出ゲームは大成功だった。


「お疲れー!」


「打ち上げ行こうぜ!」


 クラス中がお祭り騒ぎになる。


 私は廊下の窓から校庭を眺めていた。


 夕暮れが綺麗だった。


「立花さん」


 振り返る。


 風原くんがいた。


「お疲れ様」


「風原くんも」


 二人で並んで窓の外を見る。


 夕陽が差し込む。


 オレンジ色の光。


 文化祭の終わり。


 どこか切ない空気。


 その時だった。


「好きな人いるの?」


 不意打ちだった。


「え?」


 思わず固まる。


 風原くんも驚いた顔をしていた。


 どうやら自分でも無意識に聞いてしまったらしい。


「ごめん」


「いや、えっと……」


 心臓がうるさい。


「いないよ」


 嘘ではない。


 まだ認めていないだけだ。


 すると。


「そっか」


 風原くんは安心したように微笑んだ。


 その表情を見て。


 なぜだろう。


 胸が少しだけ苦しくなった。

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