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藍色吐息  作者: 久遠 ヒカリ


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第四話 噂と距離感

 五月のある昼休み。




 私はいつものようにお弁当を広げていた。




「ねぇねぇ、柚月」




 クラスメイトの森川さんが椅子を引いて近付いてくる。




「ん?」




「風原くんと仲良いよね?」




「ぶっ!?」




 危うくお茶を吹きそうになった。




「な、なんでそうなるの!?」




「だって最近よく話してるじゃん」




「話してないよ!?」




「いや話してる」




「話してる」




「話してるよね」




 周囲の女子達まで頷く。




 おかしい。




 私の認識と違う。




 確かにゲームでは毎日話している。




 でも学校では――。




「おはよう」




「お、おはよう」




 終了。




 そんなレベルである。




「いや全然仲良くないから!」




「でも風原くん、立花さんとだけは話すよ?」




「そうそう」




「他の女子にはめちゃくちゃ壁あるし」




「そうなの?」




 私が驚いていると。




 教室の入り口がざわついた。




 風原くんだ。




 相変わらず整った顔立ち。




 女子達の視線が集まる。




 しかし。




 彼はそれらを気にする様子もなく席へ向かう。




 そして。




 私の机の横で立ち止まった。




「これ」




「え?」




 机に置かれたのはノート。




「昨日休んだ授業のまとめ」




「……ありがとう」




「どういたしまして」




 それだけ言って席へ戻る。




 教室が静まり返った。




 そして数秒後。




「「「仲良いじゃん!!」」」




 大合唱だった。




 私は机に突っ伏した。




◇◇◇




 その日の夜。




『今日大変だった』




『聞きたい』




『みんなに仲良いって言われた』




 チャットを送る。




 すると。




 少しだけ返事が遅れた。




『嫌だった?』




『え?』




『噂されるの』




 私は首を傾げる。




『別に嫌じゃないけど』




 本心だった。




 恥ずかしいけれど。




 嫌ではない。




 すると。




『よかった』




 それだけ返ってきた。




 だけど。




 なぜだろう。




 画面の向こうで少しだけ安心している彼の姿が想像できた。

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