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クールな白刃さんはデレで殺す  作者: アオカラ
第三章 死が二人を別つとも
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第67話 もう一度、あなたを殺す


 真っ白な病院。

 病室へつながるスライド式のドア。

 今、その前に立っている。


 吸い寄せられるように持ち手を引き、およそ一人用の真っ白な広い間取りの病室へと入る。


 お見舞いの時間。

 そこには、人が二人いた。


「お、ようやく会えたね。白刃ちゃん」


 ベッドに背中を預けて座っているミディアムヘアの少女は、さらりと私の名前を呼んだ。


 私は……。

 そうだ。

 私は、白刃美銀だ。


 でも、私を知っている彼女は一体……?

 それに、ベッドの傍にある来客用の椅子に座って、うたた寝しているのは。

 和士君?


「ふーむ、天下の白刃ちゃんがいまいち状況をつかめていないのは、寝起きだからかな? ああいや、寝入りかな? まぁどちらにしても寝ぼけているのは間違いないようだね」

「ふ、へ? あれ、ここ、は……?」


 言葉がおぼつかない。

 発する声がどこか自分の物では無いようなふわふわとした感覚。

 流されるような、微睡むような。

 そんな空間に、私と和士君と彼女はいる。


「まぁ、ちこう寄れ。積もる話もしたい話もこれからの話も、山盛りなんだからさ」


 ちょいちょいと手招きをされ、和士君の隣にある来客用の椅子に促され、疑問を抱くことも無く近づいて座る。


 隣では和士君が静かに、安らかな寝顔を浮かべている。


「御船君、良い寝顔でしょ?」

「え? まぁ、そうですね。可愛いです」

「これからこんな可愛い寝顔を直に拝めるんだから、白刃ちゃんは役得だよねぇ? あたしは羨ましいよ」


 けらけらと調子よく笑い、和士君を見つめている。

 それは、恋慕の目であった。


「おおこわ、嫉妬と殺気が凄まじいね。さすが白刃ちゃん」

「誰ですか、あなた。いえ、分かってます。守るべき人が隣に居ることでようやく目が冴えました。あなたが和士君の昔の女ですね?」


 聞いた彼女はぱちぱちと、か弱い拍手で正解だと返してくる。

 見下すようなリアクションに苛立ちを覚える。


「申し遅れたね。あたしの名前は瀬音椿せおとつばき。約一年前に死んだ亡霊のさらに成れの果て。御船君の中に残り続けている、二次創作みたいな存在だよ」


 瀬音椿。

 未だに彼の心に巣食い続ける、彼の想い人。

 私が殺すべきである、宿敵で恋敵。


「椿。私はいますぐあなたを殺しても良いぐらいですが、話があると言ってましたので聞きましょう。現世の最後の言葉を聞き届けてあげます」

()()、やめときな」

「は?」


 人に向かって指を指す、失礼極まりない椿を睨み返すが、なぜか全く物怖じしない。


「白刃ちゃん、あんたにそれは似合わん。あんたの意志は冷たく強く鋭くても、《《非情ではない》》。どこまでも甘い御船君にお似合いの、どうやっても甘い女が誰かを『殺す』なんて酷いこと、言わない方が良い」


 やめて、私の決めた事を揺らすな。


「知ったことを言わないで」

「知りはしない、が感じてはいる。あんたには、あたしを消すなんて冷酷な手段取れるわけがない。そも、そんな冷たい性格じゃないんだよ」


 真っ白な病室が、怒気と冷気で充満する。

 私と椿の情念が至近距離でぶつかり合い、一触即発の雰囲気になる。


「白刃ちゃんさ、どうやってあたしを殺すか考えてるでしょ? 甘いんだよ」

「何が」

「手段なんて選んでいる時点でだよ。恋や愛に現を抜かして目的がすり替わってるって話。白刃ちゃんのしたいことは『御船君を支えたい』だったはずなのに、今は『御船君を救いたい』になってるじゃん」


 なぜ。

 なんで、彼女は、わかるの?


「支えるだけじゃだめだから、彼の心に巣食う『あたし』を取り除かないといけないとか、思い上がりも甚だしいよ。御船君の心によくもまぁ、ずけずけと干渉しているもんだ。自惚れんな」

「っ!」


 蹴った椅子が病室の入り口付近まで飛んでいった。

 椿の胸倉をつかもうとして伸ばした手は、割り込んだ彼女の手が私の腕を掴むことで、一寸届かなかった。


「ふーん、この程度か。所詮、最強の矛は傷つける用途だけだねぇ」

「夢幻の存在で、えらく図々しいじゃないんですか? 和士君に干渉しているのはどっちですか」

「鋭いけど、周りが見えていないよ。瀬音椿自身は死んでるんだから、ここにいる『あたし』は御船君の思い描く想い人だよ? 死後の人間を貴ぶならまだしも、同列にならべて妬むとか程度が知れてるねぇ」

「喧嘩を売るためにこの夢に私を誘ってきたんですか?」

「いいやぁ?」


 嘲笑うような、不気味で邪悪な笑みを浮かべて、椿は言った。


「正式な依頼をするために呼んだんだよ」


 どこまでも不敵で、卑屈で、不屈のぎらぎらとした黒い瞳が、私の奥深くを覗き込んでいた。


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