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クールな白刃さんはデレで殺す  作者: アオカラ
第二章 二人の想い
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第40話 姫とカズの秘密会議


 六月二十一日。

 白刃の誕生日を明日に控えたこの日。

 クラスの中で難しい名字ランキングベスト3に勝手に選ばれたあたし、神来社からいと奈津姫なつきは、同じくベスト3に入っている月見里やまなし和樹かずきと二人でショッピングモールまで来ていた。

 目的はもちろん、白刃と御船()()の誕生日祝いのために。


「さーて、あいつらが好きな物ってなんだったけかなぁ」

「あきとも白刃も料理は好きって言ってたよな? となるとキッチングッズか?」

「うーん……ピクニックで重箱とか持ってくる奴らだぞ? 料理用の器具はなんでも持ってそうじゃない?」

「たしかに……姫の言う通りだ。となると他には……あきとは本で、白刃は絵か?」

「あたしらが知ってるのはそれぐらいだよね。とりあえず一緒にぐるーっと回って行こうか」


 あたしとカズは並んで雑貨店をウインドウショッピングしていく。オシャレな服屋、可愛らしいキャラクターグッズを扱うお店、良い匂いのするたこ焼きさんにドーナツ屋さん。どれも魅力的で目移りしそうになる。

 いやいや違った、今日買い物に来たのは二人の誕生日祝いなのだから、現を抜かしてはいけない。たとえカズと二人きりだとしてもだ。


「そいえば、こうやって二人で一緒に出掛けるのって久しぶりな気がするよなー」


 カズは急にそんなことを言ってくる。あんたが普段グループで行動してるから、二人きりになれないだけだ、なんて言えるわけも無く。


「そうね」

「最近、遊びに誘ってもなかなか来てくれないもんなー」

「カラオケとかボウリングとかゲーセンとか、私は苦手なのよ」

「やっぱり不眠症は改善してないのか?」

「……まぁ、昔に比べればちょっとはマシになってきてるわよ」

「そっか。良くなっていくといいな!」


 にかっと自分の事のように喜んで笑うカズ。なんでそこまで友達想いな性格してるのか、頭の中を開いて見てみたいものよ。


「けどプレゼント、どうっすかなぁ。あきとは『白刃さんを家に誘って、そこでカズも姫もいるドッキリを仕掛けたい』って言ってたけど、俺達はどっちも祝いたいからなぁ」

「ケーキは御船が作るって言ってたよね。食べ物系は被るからまずいか」

「となれば、消耗品か?」


 なんだかんだカズは、良い勘を持っていて正解を見つけるのが早い。ゴールまでの道のりをざっくりと示してくれたら、あとは私の記憶力の出番だ。


「……たしか、美銀みしろは『リラックスできる時間が好き』っていうのを、あたしと二人でお茶した時に言ってたのよね。んで御船みふねは『お風呂が好き』って言うのを聞いたことがある」

「風呂? なんでだ?」

「汗を流せてすっきりするからだとか。あいつ、筋トレは半分趣味でやってるらしいわ」

「リラックス、風呂……。なんか似てるな」

「……確かに」


 あたしはこのショッピングモール内にバスボムやアロマ系を専門に扱っているお店がある事を思い出す。カズも考えていることは一緒のようで、困ったように笑いながら続けた。


「意外と、ああいう良い香りのするやつ、あきとも好きそうな気がする」

「むしろ同じ系統のものをあげたら、あいつらの共通の話題にもなりそうじゃない?」

「……」

「……」

「そうするか!」

「決まりね」


 そう言ってあたしたちは、二人の驚く顔を見たいが為に目的の店へ向かうのだった。


 *


 買い物は終了したけど、フードコートでちょっとだけお茶をしてから帰る事にした。

 カズに飲み物を買ってきてもらう間、あたしは椅子に座って目を閉じて待つ。

 子供の甲高い声や、人の多さで休日特有の騒がしさがフードコート全体を包む中、そんな音は気にせず少しだけ眠る。

 本当ならさっさと帰って静かなところで寝るべきなんだろうけど、それは少しもったいない。

 喧噪の中、カズの足音が近づいてくるのを感じる。


「ほい、ホットココアで良かったよな?」

「うん、ありがとう」

「ていうか、俺の分までおごってもらって良かったのか?」

「いいのよ。あたしのもついでに買ってきてくれたんだから、それぐらい」

「サンキューな!」


 そう言ってカズはごくごくとジュースを飲む。

「ぷはー!」とらしいリアクションを見て、ちょっとだけ笑う。


「んー? 姫、なんか機嫌いいな?」

「別に?」

「そうかぁ?」

「それよりさ、カズ。あんたはあの二人、いつになればくっつくと思う?」

「えっ、もうくっついてるようなもんじゃないか?」

「違うわよ、もっと公に『付き合ってます』とか『彼氏、彼女です』みたいなことを言うぐらいになるまでの話」

「おーそっちか。まぁもうそろそろなんじゃないか?」


 ちゅうちゅうとジュースを飲みながら、カズはあっさり言ってのける。


「……ホントにそう思う?」

「いやーただの勘だけどな。けど秒読みだと思うぜ」

「そう思う根拠とか、口で説明できそう?」

「ど、どうだろう……ちょっと難しいな。俺ってほら、感覚でふらふらーって感じだから、奈津姫なつきみたいに丁寧に説明できないんだ」

「んー、じゃあ質問の仕方を変えよう。今の二人がくっつかない壁は、いつになったら消えると思う?」

「あー、それなら夏休みぐらいじゃないか?」

「ほう……」


 根拠のない事をいう奴ではあるのだけど、カズはそれ以上に本質と常に近い距離に居ることを知っている。単純な情報量が多いわけではなく、情報の選別が上手い人間である。無意識でそれを行っているから、有体に「勘が良い」とは言ってるが、多分こいつはあたしより賢い。


「イベントも色々重なりそうだしな。きっかけはそこにできそうな気がするぜ」

「そっか……上手くいったら良いんだけども……」

「なんか、姫がそんなに他人の事を考えるなんて珍しいな?」

「あたし、美銀みしろに命捧げてるから」

「そうだったのか」

「おい、何普通に応答してるんだよ、ツッコめよ」

「氷の女王に仕える眠り姫って、なんか新しいな」

「ただの百合じゃん、普通だよ」

「お、おう……そうなのか?」

「ていうかそもそもさ」


 ホットココアに口を付けて、頭に糖分を回しつつ続ける。


「あいつら秘密が多すぎるんだよ。情報頼りのあたしじゃ、どこからツッコんでいけば良いのかさっぱりわからんわ。カズが羨ましい」

「あきとに白刃って、内緒にしてる事が多いのか?」

「めちゃくちゃ多いわよ。ある部分が欠けてて全体が見えなくなってるっていうのがザラ。それも一つや二つじゃない。だから入り辛い。うっかり足を進めたら地雷を踏み抜きそうで」

「そうだったんだ……」

「けどさ」


 隣にあるプレゼントの入った紙袋を見つつ、あたしは思う。


「なんでか、あいつらには見えない魅力があるんだよな。どことなく惹かれてしまうというか、気に掛けたくなるというか」

「あっ、それは俺も分かるぞ。初対面でもなんでか話しかけたくなった」

「魔性の女と男だよなぁ……。だからすぐくっつかないのか?」

「お互いに片思いし過ぎてるみたいな?」

「……両片思いってやつか」

「あはは! 姫それ、矛盾してるぞ!」


 あたしの言葉を聞いてカズはウケていた。


 矛盾、か。

 何でも貫ける矛と、何にも通さない盾。

 拮抗きっこうした状態が崩れるのは、いつになるのやら。

 ホットココアを飲み干し、空になったカップを見ながら、あたしは御船みふね美銀みしろの明るい先行きを願いつつ、明日に備えるのだった。

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