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クールな白刃さんはデレで殺す  作者: アオカラ
第二章 二人の想い
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第38話 また今度


 櫻野さくらの姉弟を見送ったあと、僕らはお土産コーナーに立ち寄る。

 葵先輩にはあれこれ聞かれたが、結局「デートの邪魔してごめんね~」とにこにこにやにやと笑いながら立ち去って行った。仮カップルである説明を必死にしても「またまたー」と笑われた。腹筋でも触らせたら真面目に話を聞いてくれたのかと今更後悔する。


 そんな風に考えながら歩いていると、急に声を掛けられる。


「……お二人さん、カップルかい?」


 お土産が並ぶエリアで突然、百八十センチ後半はあるだろう男の警備員に話しかけられる。ガタイもしっかりしており、筋骨隆々といった風貌で物々しい雰囲気に圧倒される。

 そんな人から発された言葉は、えらく素っ頓狂な問いかけだった。


「へっ!? あ、え、その……」

「はい、カップルです」


 物怖じせず白刃さんは答える。

 すると、その警備員さんはにっと怖い雰囲気を崩すように笑う。


「これ、カップルサービス。来てくれてありがとうね」


 そう言って後ろに回していた手から、小さなぬいぐるみのストラップを二つ、僕らに渡してきた。それは、可愛らしくデフォルメされたジンベエザメだった。

 渡すだけ渡したら、警備員さんは持ち場の定位置に戻っていった。


「……こ、これが目的だったの?」

「はい。この水族館の目玉、ジンベエザメの『ジン君』と『メエちゃん』です」

「あっ、よく見たら片方はハートマークのピンが付いてる……。そっちがメエちゃんか」

「……可愛いですね」


 白刃さんはうっとりするように目を細め、もらったメエちゃんを眺めている。そんな彼女を見て、僕は手の中にあるジン君を見つめつつ、言う。


「ジン君もあげようか? 白刃さん、これが目的だったんでしょ? 僕のもあげるよ」

「………………」


 めっちゃ悩んでる。

 眉間に皺を寄せ、黙りこんでいた。人生の分岐点を選んでいるのかと思うほど真剣な面持ち過ぎて、ストラップをあげるだけであることを忘れかける。

 じっくり五秒ほど考え込んだ後、彼女は口を開けた。


「……いえ、ジン君は和士あきと君が持っていてもらえますか?」

「あれ? もらって良いの?」 

「はい、デート記念として」

「お、おうふ……」


 直球に言われ恥ずかしくなってしまうが、別の話題を持ち出すことで気を紛らわせる。


「そ、そういえばさ! 今日が僕の誕生日だってよく知ってたね?」

「ネタばらしになるのですが、葵お姉ちゃんから聞いていたのです。私が直接聞いても良かったのですが、サプライズ度を増したいと思いまして」

「あー、そういえば家庭科部の人だけかもなぁ、僕の誕生日を知ってる人って。それ以外には言ったことなかったから、不思議とは思ってたんだ」

「家庭科部では、誕生日に何かあるのですか?」

「月末に、その月生まれの人達へケーキを作って一斉にお祝いするんだ。密かに楽しみにしてる」

「良い習慣ですね、美術部ではあまりそういうのは無いですから」

「……それなら、またケーキ作るよ。僕が白刃さんの誕生日に」

「良いのですか……!」


 彼女は手の中にあるメエちゃんを胸の前できゅっと握りしめ、目を輝かせる。


「あはは、そこまで期待されちゃったら、僕も本気でいかないとね! ちなみに白刃さんの誕生日っていつ?」

「明後日です」

「……ん?」


 ノータイムで繰り出された回答に、理解が追い付かない。


「六月二十二日です」


 補足するように、細かい数字で情報を提供する。

 腕を組み、目を瞑り熟考する。数秒後、かっと目を見開き、悲痛に叫ぶ。


「言ってよぉ!?」

「その反応は予測できていたので、言うべきでしたね。すみません」

「ま、待って! 僕すっごい素敵なプレゼントもらったっていうのに、それに見合うほどのプレゼントを二日で用意できる自信ないよぉ!?」

和士あきと君、私はプレゼント文化というのは気にし過ぎる必要は無いと思うのです。『もらったから返したい』はまだしも、『もらったから返さないといけない』は悪循環とも言えるのではないのでしょうか? だから、気にしないで下さい」

「そ、そうは言っても……!」

「今回は私があなたの誕生日を先に知ってたわけですから、フェアプレイではないです、ハンデです。けどそうですね……。あなたの作るケーキはまた食べたいので、希望を言ってみても良いですか?」

「希望あるの!? それならもちろん! 作れるものなら何でも言って!」

 食い気味に迫る僕を見て、白刃さんは安心したかのように微笑む。

「ガトーショコラが、また食べたいです」


 *


「すいません、これって配達できますか?」

「はい、お受けできますよ」

「じゃあこの住所に、時間は午後六時から八時の間で……」


 白刃さんがお手洗いに行ったことで、僕はお土産コーナーで一人となっていた。その隙に、節約でこつこつと貯めていたお小遣いを使い、とある買い物をした。

 しかし、それをそのまま持って帰ると荷物になるだけでなく、最悪彼女に気付かれる可能性もあるため配達で受け取る事とした。


「……喜んでもらえたらいいなぁ」


 ぼそっと独り言が浮き出る。

 僕にとってこのサプライズプレゼントは、『もらったから返さないといけない』ではない。

『日頃の感謝を込めて、あの人にあげたい』である。


 淡い期待を持ちつつ、二日後にある彼女の誕生日に備えるのだった。

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