第一章 7話 捜索1
市場にやって来た。野菜、肉、果物、アクセサリーなど様々な物が売っている。どこもかしこも騒がしく活気に溢れていた。
「さて、聞き込みスタートですね。エリス」
「えぇ、そうですけれどこの姿、変ではありませんか?」
「大丈夫です。とても可愛らしいですよ」
自信を持って私の質問に答えた
今の私はレイの能力で変装をしている。影の膜で覆われてまるで別人の様になっていた。黒い髪のポニーテールで黒とは対極の白色のワンピースを着ている。
「…そうですか、良かった」
嬉しいという純粋な気持ちが心に広がる。
このまま、一緒に楽しんでいたい思いを抑えて捜索へと切り替える。
「とりあえず、手当たり次第に聞いてみましょう。カーバンクルは珍しい魔獣ですから目撃した人も多いかもしれません」
「そうですね。メルはそこまで魔石が大きくないので転移の魔法を連続して使えないのが幸いです」
「いやーしかし、こうして見ると建国祭の準備が結構進んでいますね。確か…2日後でしたね。エリスは祭り、好きですか?」
「……」
「あの、エリス大丈夫ですか?」
「…あっ、すいません。小さい頃に母とよく行っていたのですが…」
正直言うと祭りは好きだ。夜、あちこちに色鮮やかな明かりが灯されて、多くの大人、子供が笑顔で店を巡っていく。お付き合いをしているであろう男女や間に子供を挟み手を繋いで歩いていく幸せそうな家族、誰もが好きになるであろう。
祭りの最後に上がる花火は美しく今でも脳裏に焼き付いている。
けれど、母が死んだ
女王であるエリナ・カルティーナが死んだ
母が死んでから建国祭には行っていない。花火も音が聞こえるだけ。
もし、祭りを見てしまったら、死んだ母との記憶を嫌でも思い出してしまうから。決して叶わない思いが生まれてしまうから。
でも、今から変わる。
新しい一歩を踏み出そう。そう決意したのだから。
「…なるほど。大変失礼しました」
「…まぁ、気にしないで聞き込みを始めましょう」
「そうですね!」
果物屋さんにやって来た。色とりどりの果実が無数に並んでいる。
「いらっしゃい!うちの果物はどれも新鮮だ。今ならカップルってことで割り引いとくぜ!」
「こんにちは。その提案はありがたいですが私達付き合っているわけではないんですよ」
「おぉ、そうなのかい。それはすまねーな、あまりにお似合いだったもんでよ」
動揺もせず、レイは会話を続けている。
少しは嬉しそうにすればいいのにと会話を横目に見て思う。
ん?なぜこのような思いを抱いたのだろうか。無意識に心の中で口に出していた。…いや、今は聞き込みに集中しなくては。
「では、これとこれを2個ずつください」
「はい、毎度!」
店の人が手際よく果物を紙の袋に入れる。
「しっかし、あんたら両方花持ちかい。騎士団に入ってたりは…ないか。2ヶ月前くらいに大規模遠征に行ったばかりだもんな」
「そうですね。王国に残っているのは第二部隊と第六部隊だけで周辺の魔物退治と治安維持で忙しいですから、私達のように市場を見て回る暇はありません」
「だな。あと、すまんな兄ちゃんカーバンクルの事」
「お気になさらず」
「そうかい。また来てくれよ」
軽い会釈をして私達は果物屋を後にした。
買った果物を貰い、聞き込みを続けていく、アクセサリー屋、武器屋、本屋、色んなお店に行った。しかし、手がかりが見つかることはなかった。
「ふむ、…こうなるとやはり捕まってしまったと考えたほうが良さそうですね」
「…やっぱり、そうなりますか」
メルは無事だろうか
心配が大きくなっていく
「エリス、ご安心を。私はなんでも屋ということをお忘れですか?」
「…無用の心配でしたね」
「今日はこれで一区切りとしましょう。私が作った分身も万能ではありませんので」
「…はい、お疲れ様でした」
「ゆっくり休んでくださいね。私は夜にも捜索を続けますので、新たな情報を発見次第ご報告させていただきます」
この会話を終えてから城に戻り夕食や風呂を済ませて眠りについた




