第一章 5話 「私は」
「えっ」
声が部屋中に響き渡る、口が開き大きく目を見開いたままの状態が5秒程度続いた。そんな誰が見ても間抜けな状態の顔を見てレイはからかう様に軽く笑う。
「本当ですか!?全く持って男性には見えなかったのですが」
「分かりますお客様、私もここに入ったばかりの頃は勘違いしておりました。なんなら、此処に来る人は全員最初は彼を女性と見間違えますから」
困惑はまだ続いていた。サレナを男性と認識しようにも未だに脳がそれを拒んでくる。
「お客様、その事は一旦置いておいて依頼ですが明日から捜索開始でよろしいでしょうか?他に指定があればお聞きいたしますが?」
そうだった。私はメルの為に此処に足を運んだのだ。頭の中にある困惑をとりあえず置いておき、依頼へ意識を集中させる。
「....私も一緒に探させてもらえないでしょうか」
「お客様危険です。」
レイから笑みが一瞬で消えた。それと同時にゾッとする。
「危険は承知です。でも、私だって花持ち、自分の身ぐらいは..」
二つ花なら騎士団の一般隊員くらいの強さはあるとされている。それに、彼は五つ花だ、いざとなったら彼が..
「お客様その様な考えをいつまでもお持ちになっていると、いずれ身を滅ぼしますよ」
「!」
思考が見透かされてしまったか。でも、愚かな考えであることは自分自身がよく分かってる。
「小さい頃、母親が殺されたんです。」
少し驚いた表情でレイは私を見つめる
「...」
「その時、お母様と一緒にいて私を庇って殺されたって聞いたんですけどショックで何も覚えていなかったんです。それから、何もかも人任せにしてしまって、でもメルさえも貴方に任せっきりにしてしまったらもう...」
『ゆっくり休みなさい』
『お前はもう何もしなくて良い』
『大人しくしてろ』
『ごめんね。お姉ちゃん』
過去に家族から言われた言葉が再び体中を廻る。変わりたい。そうだ、いつまでも逃げ続けてはいけない
「それでも、私を連れていって下さい!私はもう逃げたくない。前を向いて生きていきたい!」
「エリスという名前にその腕輪、 お客様やはり...」
「私はエリス、エリス・カルティーナこのカルティナ王国の第四王女です」
レイに笑顔が戻った。まるで泣いている子供にするような優しい顔。それを見るだけで安心できるような、そんな感じ
「道理で、こんな店に。承知致しました、お客様いえ第四王女様」
「エリスでいいです。様も付けないで」
「それだと、私は騎士団に捕まってしまいますよ」
「私がよいと言ったらよいのです」
「承知致しました。では今日はひとまずお帰り下さい。何ならお送りしましょうか?」
「えっ、そんな事も出来るんですか?」
「はい。ではこちらに、私の近くを離れないで下さいね」
レイの側へ行き、袖に掴まる。
「では行きますよ。私が良いと言うまで目を閉じておいて下さい」
そう言い、エリスは目を閉じ2人は影の上に移動した。「ブワッ」と下へ落ちる。温度を感じないまま水へ沈むような感覚といえば良いのだろうか、しかし呼吸は出来る。本当に不思議だ。そう考えているうちに次は上がる感覚、地に足がつきそれと同時に
「目を開けて良いですよ」
目を開ける。そこは私の部屋だった。王女なだけあってかなり豪華な感じの
「ありがとう。明日からよろしく」
「お休みなさいエリス。明日迎えに行きますのでこの部屋で待っていてくださいね」
笑みは残ったままだった。そのまま体が影になって地面へ溶け込んだ。
「そっちもお休みなさい」
早速、お風呂へ入って、着替えベットへ移動し寝る準備を進める。ベットに入りこみ目を閉じた。彼の..レイの笑う顔が忘れられない、少し暑くなってきただろうか。顔を横に振り、寝むれるように羊を数えた。
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第四王女であり依頼人でもあるエリスを送り届けた後、レイはなんでも屋に戻ると目の前にサレナがいた。目は開いていてこちらを見ている。未だに男なのだろうかと思ってしまう程の美貌で少し見惚れてしまった。急にサレナが口を開く。
「第四王女,大丈夫なのですか? 彼女は王位継承権を剥奪されていて王族の間でも避けられているという話も聞いています。それにあの花の紋様は...」
「大丈夫ですよ。『噂』通りみたいだしね」
「そうですか。ご武運を」
と言い残し、気付けばサレナは目の前から消えていた。机の上に置いてあった資料を手に取り、ソファに全体重を預けてから資料を見つめる。そこには一つの写真が貼ってあった。幼い赤髪の少女の写真が
「しかし、困ったものですね」
ため息を吐いてから言う
「まさか依頼人が...」
その資料は国家機密であり、王族でもごく一部の人間しか知ることが出来ない情報が載ってあた。
そこには書いてあった。
エリス・カルティーナ
『女王殺しの第四王女』
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