「えっ」
「ご依頼ですね。」
ここはなんでも屋。支払うお金に応じてあらゆる依頼を引き受けてくれる場所。私も依頼があってここに来た。依頼以外が目的でここに来る人はいないだろう。
「話が早くて助かります。」
良い匂いがした。香水だろうか。初めての場所だというのに妙にリラックスできた。紅茶も飲み、糸で縛りつけられていたような緊張は一瞬で解ける。
「では具体的な内容を教えてください。」
「依頼は私のペットの捜索です。ペットと言っても魔獣なんですが。」
「魔獣、、ですか?」
「はい、カーバンクルで転移の魔石が埋め込められている希少個体なんです。」
『カーバンクル』 猫や犬と同じような大きさで大きな垂れ耳と額に埋め込まれている魔石が特徴的な魔獣。稀にだがさっき言った様に転移、他には治癒、吸収などの希少な魔石が埋め込められている個体が存在している。そのため軍事転用やテロに使うために『ブラックマーケット』では盛んに高額で取引がされているという噂が流れている。また、基本的には魔石が暴走しないように『首輪』がつけられている。
もちろん、私のはただのペット用だ。 モフモフで毎日の癒しだったのに、早く見つけ出さなければ。
「いなくなってしまった原因は理解できていますか?」
「昨日、夕方にメルと散歩をしていたのですが、急に制御の首輪が壊れてしまって転移の魔法が暴発してどこかに行ってしまいました。王国の中にいると思います。」
こう思うのは理由がある。結界だ、この国の周囲には魔法などの攻撃を無効化させる結界が張ってある。魔獣や敵国からの攻撃を防ぐためであり、結界内でもその効果は魔獣にだけ作用する。メルの転移の範囲も結界内で限定されるはずだ。
「なるほど。ならば早めに行動したほうがいいですね。 早くしないと、そこらへんのチンピラに捕まって売られてしまいますから。」
「見つけられますか?」
「ご安心を。 依頼は必ず遂行させていただきます。」
笑みを浮かばせて言う。その顔には、失敗という可能性を微塵も感じさせないほどの何かがあった。
「では、少々そこでお待ちください。」
と言うと右側にある資料が山積みの書斎らしき机に向かう。その机の奥には多くの本が収納されている棚があった。「えーとぉ」と言いながら、複数の資料を手に取り確認している。
「ふぅ」と軽く下を向いて息を吐き、安堵する。この感じならすぐ見つけ出してくれそうだ。しかも五つ花、実力も申し分ないだろう。そんなところで風が吹く、すぐ隣で。目をやるとサレナがいた。改めて見ると、黒いロングでさらさらの髪、すらっとしたスタイル、男女問わず見惚れてしまうだろう。
「紅茶、お代わりはいるでしょうか?」と目を閉じながら言う。
「お願いします」こちらも応えるとどんどん空きのティーカップに紅茶が注がれていく。その作法は美しく、思わず見惚れてしまう。
紅茶が置かれた後「サレナさんは…」質問しようと彼女を見る。
「えっ」 いない、いなかった。さっきまでそこにいたのに。やはり人見知りだからだろうか。
「お待たせしましたお客様。」
「すごいですね、彼女。速さが尋常じゃない。 かなりの実力者なのでしょう?」
そう言った後、ティーカップに口をつける。
「彼女?」
(ん?)
「お客様、勘違いしておりますよ。」
「彼、サレナ・イータルは男です」
脳がフリーズする。ティーカップを落としてしまった。そして心の声がそのまま出てしまう。
「えっ」
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