生きるため
「こんばんは」
「……」
「申し訳ございません。貴方にお聞きしたいことがありまして、強引な手段を使わせて頂きました。こちらの質問に答える意志はありますか?」
フードの人物は顔を上げ、私の服装、顔、花の紋様をくまなく観察している。すると、何か気付いたように「ん?」と声を出した。
何だ?私の事を知っている人物?過去のお客様という可能性もあるが…
そんな事を考えていると
「分かった、答えてやるよ」
「えっ?」
「答えてやるって言ってんだよ」
突然、口を開いたということもあるが、まさか第一声がそれだとは思いもよらず、レイは間抜けに口を開けたまましていた。
「おい、おーい、聞こえてるか?」
その声を聞き、レイは我に返る。
「…理由をお伺いしても?」
「あぁ?理由…まぁ、あんたに反抗しても無駄だと思ったからだよ。五つ花の花持ち、隊長級じゃねえか。それにここ…なんでも屋だろ?」
「失礼しました。過去に利用して頂いたことのあるお客様でしたか」
自分の失敗を悔いる。過去のお客様に失敗な態度をとってしまった、これではなんでも屋のこれからに関わる。でも、これはチャンスだ。上手くいけば情報を聞き出せるかもしれない。
「いや、そういうわけじゃねーんだが」
「そうでしたか、するとご家族かご友人に利用者が?」
「…えーっと、噂だよ。う わ さ」
「…なるほど、噂ですか」
「そうだよ。あんた結構有名なんだぜ。なんでも屋の五つ花 影を操るレイ・ノーマンだろ」
「それも噂で?」
「そうだよ」
「そうでしたか、お恥ずかしい限りです。では、拘束を解きますがお逃げしないようにお願いします」
「あぁ、頼むぜ」
拘束を解き椅子に座らせる。サレナがお茶を出し準備を進めた。
「おぉ、綺麗な人だな」
「ふふ、そうでしょう。彼に見惚れてしまう人は多いのですよ」
「だろうな。あそこまで綺麗な女は見たことがねえよ……ん?」
フードの人物は顎に手を添えて考える仕草をする。その後、腕を組み上を見上げた。隠されていた素顔が少し見えた。これまでの経験から性別、年齢を推測する。
「んー?…あっ、すまねーな多分勘違いだ。本題に入ろうぜ」
サレナさんの事は…今はいいですね
「話が早くて助かります。では、お名前をお聞きしても?後、可能なら顔を見せて頂きたいです」
「それって、俺に何かメリットがあるのか?」
「はい。今後困ったことがあれば、無償でなんでも屋がお手伝いすることが出来ます。もちろんずっと、という訳にはいきませんが」
このくらいなら大丈夫だろう。それに、なんでも屋の客が増えるのは良いことだ。紅茶を一口飲み、フードの人物は口を開く。
「いいぜ」
「ありがとうござい…」
「ただし、も一つ条件だ」遮るように言う。
「条件…ですか」
「まぁ、簡単に言えばなんでも屋とは別に個人での協力関係だ」
「なるほど。それは継続的な協力という解釈でよろしいでしょうか?」
「そっちも話が早くて助かるぜ。実は俺もあんたらと同じようなことしてんだよ。簡単に言えば情報屋だな。情報を金で買うことができる場所だ」
「なぜ協力関係を?」
「まぁ、万が一って感じだな。こっちも五つ花が味方にいれば心強い。それにこれは対等だ、こっちが情報を無償で出す事も出来る。助け合いってやつだ」
情報屋、店長が個人的に使用したことが幾度かあると聞いたことがあった。信用して良いものか、今までの情報を組み立てる。
・店長の個人的な使用
・情報屋の情報は正確と見ていい
・なんでも屋の店長ということは理解していない
こんなところだろうか。一番引っかかるのは、店長がなんでも屋の所属であると明かしていないことだ。いや、理解している?
「この取引は今回が初めてですか?」
「あぁ、そうだぜ」
その言葉に偽りは無いと判断する。そもそもメリットが無い、店長と知り合いであること、情報屋の利用者であることを明かした方が有利にこの協力関係を結ぶことが出来る。
「前向きに検討させてもらうという形であれば可能ですが、どうでしょう?」
ひとまず保留という形で手を打っておきたい。店長が理由も無く明かしていないだけの可能性もあるかもしれなし、上手く取引出来れば今後の依頼がスムーズに進められる。
「…いいぜ、断れるよきゃ十分増しだ」
そう言ってフードをめくり、顔が明らかになった。金髪、澄んだ緑色の目で好青年という感じだ。口調と違った印象を受ける
「俺の名前はカール・ソラティスだ。よろしく頼むぜ」
「…ソラティスですか」
「あぁ、流石に知ってるか。没落した貴族で有名だからな。別に俺は花持ちじゃねぇから自分の身すら守ることができない。死にたくないんでね、ここで協力関係を結んどきたいわけだ」
「今更ですが、なぜ私個人での協力関係なのですか?」
「今は個人なだけだ。いつか、なんでも屋全体で継続的な協力関係を結ぶつもりだぜ。この機会を逃すわけにはいけねーしな。この事は俺とオマエだけの秘密だからな」
普通にサレナさんに聞かれてると思うけど
「はい、秘密ですね」
「それじゃ、何が知りたい。情報屋の名にかけて何でも答えてやるよ」
自信満々に胸を張りこちらを見つめる
「では、いくつか質問をさせてもらいます」
「───────てな感じだ。これで知りたいことは全部だよな?」
あれから質問をして知りたいことは大体分かった。カールが闇市場用の魔獣の運び人で魔獣を捕まえて金を稼いでいたこと、エリスのメルらしき転移の宝石獣もそこにいる。
「決行は明日の昼ですね」
「そうだ、昼に警備は一番手薄になる。そこが狙い目だぜ」
「ご協力ありがとうございました」
「おうよ、協力関係のこと期待してるぜ」
「お送りしましょうか?」
「いいよ、寄るところがあるんでね」
そう言ってカールは去って行った。
レイは2つのティーカップを片付け始めようと立って、手を伸ばした。
「それは、私の仕事なのですが」
レイが気付かぬうちに2つのティーカップが消える。
「すいません、サレナさん。僕、疲れているんですかね?」
「…『あの依頼』エリス様の依頼と並行して出来ますか?期限は建国祭の日ですよ。必要なら変わりますが」
「…大丈夫ですよ。なんでも屋に入った時から覚悟は決めています。それに、明日エリスの依頼を解決すれば、余裕で間に合いますよ」
「本当、運が無いですね。あの子も貴方も」
そう言うとサレナは去って行った
明日に備え、レイはすぐに準備を始める
時間は深夜。誰もいない道を歩き続ける少年が1人。周りに誰もいないことを確認して、ポケットから水晶を取り出す。
「おい、聞こえてるか」
「……あーあーテステス。おけ、聞こえてるよーん」
「相変わらず、気色の悪い喋り方だな」
「そんなことはいいんだよ、没落貴族様。それでレイには会えたかい?」
「…あぁ、お前の言った通りだったぜ。目的は達成した」
「いいねいいね。ありがと♡」
「感謝の代わりに金を寄こしな」
「えぇ~、ケチ。僕と君の仲じゃないか」
「うるせぇ」
「それにさ、勝手に協力関係とか結ぼうとしないでくれる?そんな事命令した覚えないんだけど」
「結んだらダメなんて言われてないんでね、俺のためにやらせてもらった」
「はぁ、まぁいいや。僕は環境を整えたかっただけだし」
「切っていいか?もう寝たいんだが」
「えぇ~もう少───」
カールは水晶をしまう。
月を見て自分にしか聞こえない言葉を出す
「悪いなレイ。お前なら大丈夫だろ」
少年は再び歩みを進める
明日のために、生きるために




