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魔術的鍵師物語  作者: mono
第二

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9/30

ぼんやりさん‐みっつめ


「なにさんですか。」


「えっとアキナです。オルモさんは学者さんなんですか?なんか・・・すごいです。」


 退屈な片付けをこなしていくオルモとアキナ、とうとう口を動かし始める。


「えー、ありがとう。学者、科学系なんだけどね、昔からの夢だったんだ。戦争の中で人類の主な手段が魔法から科学になって、こんな素晴らしいものがあったんだって思ったんだ。だって科学はだれにでも使えるし、科学は、今の目の前にあるからね。好きになってよかったよ科学。・・・・それとね科学者になって、カルラとも出会えてこんな幸せなことはないよ。」


 嬉々として語る幸せそうなオルモの姿はアキナには特段輝いて見えた。


「気になってたんだけど、アキナさんもだいぶ色白だよね。息子ほどじゃないけど。・・・あぁ戻ってほしいなぁ。カルモ。」


 寂しそうな声色を隠すようにオルモは再び手を動かし始める。

 アスカと同様に二階にいっていたイエレナは、似たような背丈の子供に服の裾を摘まれ、ぐいぐいと引っ張られ、ついには別の部屋にまで連れられてしまった。


「ええっとアスカです。君をなおしに来ました。どうぞよろしく。」


 カルモの前に進み、視線を合わせるながら話し始める。

 真剣なまなざしでカルモを見ながら、扉付近にいるカルラに話しかける。


「息子さん・・・カルモさんは、どのくらいこの状態ですか?」


「半年ぐらい・・かな。正直よく分からないの。いつの間にかこうなっていたというか。気づいたらこうなってしまったというか。すいません。」

 

 自分自身をなごませるように、目元こすりながら、カルラが言う。


「いや別に、大して重要でもないので・・・。責めているわけではないです。それともう一つ質問していいですか。最近は、ずっと家で生活している感じですか。」


「そうですね。学校にも在籍してますが、最近はてんで。後外出自体もしてませんね。」


 アスカは顎あたりを触りながら、深く考え始める。そしてなにか決めたのか、カルラを見る。


「一か月。いやもう少し短いかもしれませんが、しばらくカルラさんと行動を共にしてもかまいませんか。それで最終的な治療は、街の外で行いたいと考えいます。どう・・ですかね。」


「もちろん、お願いしたいです。・・・・カルモは戻ってくると信じてますから。」


 カルラは、胸元にしまっていた眼鏡をかけ、穏やかな目で息子を見る。そこではもう目つきの鋭さは消えていた。どうやらなかなかに視力が悪いようだ。

 階段のきしむ音。アスカとカルラは一階に戻っていく。


「ということで、アキナさんしばらくはこの街で過ごします。」


 アスカは、いまだ片づけを終えていないアキナに話す。

 アキナは、グッドのポーズをその小さな手でつくり、はにかみながらアスカにむけて突き出す。

 

「おーけーよ。なんてったってまだまだ片付けが終わらないからね。」


 階段を軋ませるような音。

 冗談の中に混じってくる乾いた木の擦れるような音。

 はにかんでいたアキナもその笑顔のままそちらへ注意を向ける。


「おお、カルモ?どうした・・・ちょ、ちょっと。」


 カルモは、その薄い手で、綺麗に積み重ねられた両親の研究の資料とやらを抱え、まるでもとに戻す様に、静かに放り投げ始めた。

 アキナもアスカもそれを見つめるばかりで、特に制止させようとはしなかった。それはカルモの両親も変わらなかった。

 戸惑いからくる判断の緩み。

 目を細めながらそれを見るアスカ。

 雑多に宙を舞う白い紙が漂うその部屋、親である二人は、何もできずにいた。いや何をするべきなのかばかりをひたすらに考えていた。

 そんな静かな空間はすぐに切り替えられる。

 階段が踏まれる音。これまでのよりもはるかに軽さのある音で階段が鳴く。


「キルラ・・・・。友達かい?仲良くするんだぞ。」


 イエレナともう一人、父にキルラと呼ばれた少年。イエレナよりもはるかに背丈の小さい彼の丸々とした目は、母のあの目を思わせるものだった。

 ちょこちょこと歩くイエレナが、カルモの手を取り、家の外へ向かっていく。

 

「すみません。すこしばかり日の光にあたってきます。」


 アスカは、普段と大差ない声で二人の大人に声をかけ、イエレナを追っていく。


「あ、私も行く。」


 アキナもそこへ駆け出す。

 健気な女の子にぺこりと頭を下げられた二人の大人は、もう一人の息子を残し、己の口をほんの開けたまま、その中に渇きを与えているばかりであった。

読んでいただきありがとうございます。

感想お待ちしています。

次話もお楽しみください。

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