ぼんやりさん‐よっつめ
太陽が、街全体を照らしている。トラオム全体を照らしている。
ぼんやり・・・そうぼんやりと。
「おぉーい。まってよぉ。」
あとからついてきたアキナがようやく三人に追いつく。
イエレナとカルモに先に追いついていたアスカは、背中側で手を組みながら、のんびりと二人の歩みに合わせている。
「なんだかこの街は、眠くなるなぁ。ふわぁぁぁ・・・。ほら向こうからくる馬車の・・・あの馬、俺みたいに眠そうな顔してるよ。」
あくびをするアキナは、目元から出る少量を涙を擦り、めいいっぱいで全身の伸びをする。
するとここでカルモに動きが現れる。
イエレナに誘われるようにただ歩いていたカルモは、その手の力を緩め、するりとイエレナから離れていく。
そよ風に身を代わられたのか、カルモがスムーズに前へその足を運び通行人やらなにやらを留まることなくいなしていく。
そうしてたどり着いたのは、アスカに似た眠たい顔の馬。
それと口と口がついてしまうのではないかというほどまで近づき、ついにその足を止める。
そうするとカルモは、馬のしっぱ側に回り、後ろ脚をぼんやりと眺め始めた。
「なんだい兄ちゃん。そんなに大層な馬でもないぞ、こいつぁ。それともなんだい。馬のそうゆうのが好きなんかい。かっかっかっ。」
商人らしきオヤジの笑い声が、周囲にうるさく響く。しかし返事のない美少年にリズムを崩されたようで、若干声の調子を落としていった。
「ああー、すいません。馬の進行止めてしまって。」
言葉とは裏腹にたいして悪びれた様子のないアスカが、カルモを連れ戻していく。
「いったいどうしたんだ。」
「さあ?」
アスカもアキナも、頭の上でハテナをつくり、首をかしげる。そのうち、アキナはカルモの目元にある異様な隈に気づいたが、それには言及しなかった。
その後、二時間ほどぼんやりと歩き、焦げ付いたようなカルモの隈も、日の落ち始める時間帯になっていったことで、はっきりとは見えなくなっていった。
「家・・戻るか。そろそろ。イエレナ、彼の手、引いてくれないか。」
アスカに頼まれたイエレナは淡々とカルモの隣に位置し、来た道を辿るように歩き始めた。
道中、先ほどの馬車を追い越すことになる。どうやらここらの質屋で最後の値踏みをされているようだ。
馬の後ろ脚。かなりの筋肉質が分かる。硬く地面をたたく蹄。そこから伸びるように筋繊維が張りつめ、弓のように曲を描きながら、カツカツツッと足全体で地を打ち鳴らしている。
アスカは、すれ違いざまにそれを見るとともに、へこへこと頭を下げていたオヤジに会釈だけして、また普通の調子で歩いていった。
「えっと、帰りました。」
言葉選びに迷ったのかアスカの言葉は、弱弱しくあった。
「お帰りなさい。カルモはどうだったかしら。」
「うーん。特段のことは別に・・・。正直まだわかりませんね。・・・・・あっ、でも一度、馬の方に寄って行って、馬車のオヤジさんに絡まれてましたね。」
「そう…何かしらね。馬に興味を持ったことなんで今の一度もなかったのに。まぁしかし馬も動物だから気をつけなさいね。あなたも。みんなも。」
心配そうな声でカルラが、言葉を溢し、それに乗っかるように父のオルモが天パを揺らしながら言う。
「そうだぞ。こないだも馬に蹴られて、誰かが大けがしたって話どこかで聞いたぞ。」
おそらく普段の調子なのだろう、会話は途切れることなく部屋中で続いていく。しかし人見知りをしているのかキルラは机の影から眺めているだけであった。
「とりあえず、今日はこの辺にさせていただきます。またあした伺います。」
眼鏡の位置を直しながら、アスカが言う。
イエレナそしてアキナを連れ、家を後にした。
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