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魔術的鍵師物語  作者: mono
第八

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83/119

拠り所‐よっつめ

 散乱する家の中に、再びアスカは足を踏みいれる。

 血の溜まりは、床下へと染みていき、消すことができないほどにこべりついている。

 アスカの口は、疑問を率直に聞く。


「あ、あの・・・・何が・・・・あったか・・・・・教えてもらうことってできる?」


 小さな子供は淀みなくアスカに答える。


「・・・・・突然、ナイフが・・・・・・殺された?ってこと?」


 イエレナがナイフをアスカに見せる。

 

「ほかには・・・・・いやっううん、もうだいじょぶ。君・・・・なんて言うの?」


「ヴァサー・・・・・・お母さんはヴァーゼ。お父さんはレパラトゥーア。・・・・・・お母さんも死んじゃった?」


「ううん。死んでないよ。生きてる。ほら胸に手を当ててみて。動いてるでしょ。だからダイジョブ。きっと今は疲れて眠っちゃっただけだよ。ヴァサーも、今日は少し・・・・もう目を瞑ってていいよ。」


 アスカはヴァサーとヴァーゼを外へと運び、少しの間、日陰で眠らせる。


「イエレナ・・・・二人の様子見てて。俺とアキナで、家の中の片付けやっておくから。」


 そうして少しずつ散乱するものや家具やらを片付けていく。

 アキナが、壊れた食器やらを集めていき、ひとつの千切られた写真を手に取る。


「幸せそう。」


 そこには二人の笑顔があるがヴァサーはいない。父親と母親の二人だけがいるようになっている。

 ガラスの破片は壁に傷をつけ、下に落ちている。

 暫くして、集落でもないただ一つの家があるこの地に、ようやく月が昇る。

 そのころには、家の中はあらかた整理され、床に残る跡もごまかしが聞くほどになっていた。

 アスカとアキナが形だけは何とかなった家を静かに見つめていく。とはいっても窓や扉の壊れは残ったままである。


「ねぇ、外の・・・・・三人の様子見に行きましょ。」


 アキナの提案で、二人は冷え込む外へと出る。

 ヴァサーは目を覚まし、イエレナと一緒になって夜空を見ている。そしてヴァーゼはいまだその瞳を閉じ、眠り込んでいる。


「まだ起きないわね。」


 うんと頷き、アスカも夜空を見始める。

 そうして少しづつ時間が過ぎていき、空間に囁かれるのは寝息だけになっていった。

 次の日、ヴァーゼを含む全員が目を覚ます。

 分厚く曇る空は、灰色に染まっている。青空も朝日もまったく見えやしない。

 アスカは初めて喋る母親にあたふたと口を動かす。


「お、おはようございます・・・・・・あの、俺こっちの小さいほうの兄です。」


「・・・・・?・・・・・・・・・・・あれ、私、あれ?」


 ヴァーゼは事態を掴めず、困惑する。


「夫は?・・・・・・ねぇヴァサー、お父さんは!?」


 ヴァサーは指さす。アスカを指さす。

 その背後には、手の加えられた大地と、横たわる花束が置かれているのだった。

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