拠り所‐よっつめ
散乱する家の中に、再びアスカは足を踏みいれる。
血の溜まりは、床下へと染みていき、消すことができないほどにこべりついている。
アスカの口は、疑問を率直に聞く。
「あ、あの・・・・何が・・・・あったか・・・・・教えてもらうことってできる?」
小さな子供は淀みなくアスカに答える。
「・・・・・突然、ナイフが・・・・・・殺された?ってこと?」
イエレナがナイフをアスカに見せる。
「ほかには・・・・・いやっううん、もうだいじょぶ。君・・・・なんて言うの?」
「ヴァサー・・・・・・お母さんはヴァーゼ。お父さんはレパラトゥーア。・・・・・・お母さんも死んじゃった?」
「ううん。死んでないよ。生きてる。ほら胸に手を当ててみて。動いてるでしょ。だからダイジョブ。きっと今は疲れて眠っちゃっただけだよ。ヴァサーも、今日は少し・・・・もう目を瞑ってていいよ。」
アスカはヴァサーとヴァーゼを外へと運び、少しの間、日陰で眠らせる。
「イエレナ・・・・二人の様子見てて。俺とアキナで、家の中の片付けやっておくから。」
そうして少しずつ散乱するものや家具やらを片付けていく。
アキナが、壊れた食器やらを集めていき、ひとつの千切られた写真を手に取る。
「幸せそう。」
そこには二人の笑顔があるがヴァサーはいない。父親と母親の二人だけがいるようになっている。
ガラスの破片は壁に傷をつけ、下に落ちている。
暫くして、集落でもないただ一つの家があるこの地に、ようやく月が昇る。
そのころには、家の中はあらかた整理され、床に残る跡もごまかしが聞くほどになっていた。
アスカとアキナが形だけは何とかなった家を静かに見つめていく。とはいっても窓や扉の壊れは残ったままである。
「ねぇ、外の・・・・・三人の様子見に行きましょ。」
アキナの提案で、二人は冷え込む外へと出る。
ヴァサーは目を覚まし、イエレナと一緒になって夜空を見ている。そしてヴァーゼはいまだその瞳を閉じ、眠り込んでいる。
「まだ起きないわね。」
うんと頷き、アスカも夜空を見始める。
そうして少しづつ時間が過ぎていき、空間に囁かれるのは寝息だけになっていった。
次の日、ヴァーゼを含む全員が目を覚ます。
分厚く曇る空は、灰色に染まっている。青空も朝日もまったく見えやしない。
アスカは初めて喋る母親にあたふたと口を動かす。
「お、おはようございます・・・・・・あの、俺こっちの小さいほうの兄です。」
「・・・・・?・・・・・・・・・・・あれ、私、あれ?」
ヴァーゼは事態を掴めず、困惑する。
「夫は?・・・・・・ねぇヴァサー、お父さんは!?」
ヴァサーは指さす。アスカを指さす。
その背後には、手の加えられた大地と、横たわる花束が置かれているのだった。




