分かれ道‐じゅっこめ
アンダーが歌を披露してから数時間後、その家はごたごたと騒々しくなっていた。
「歌手を目指すってことは、家をでるんだろ?はよう荷物でもまとめな。」
アインアンデラの言葉は、真にアンダーを認めるということであった。その言葉とともに、涙に潰れるページを閉じ、アンダーは今、荷物をまとめていっている。
アンダーはこれまでのノートを開き、選別していく。ひとつまたひとつと、山となっていた紙の山は崩されていった。
膨らむ荷物はパンパンになり、限界に達する。
それが合図となる。
「オヤジ・・・・・おれ、行くよ。」
アンダーが荷物を背負い、外への扉に手をのせる。
「そうかよ。・・・・・まぁ頑張れよ。外・・・・・地上に出るんだろ?なら俺にも恩恵がある。どうせお前は、上でも家具を作って売るだろ。そうすれば資金にもなる。家具の宣伝にもなる。万々歳だぜ。」
乾いた笑いで、アンダーを見送るつもりであった。
アスカ達も続いて、荷物をまとめ、足並みをそろえて出発へと向けていく。
アスカ、イエレナの順で家を出る。
アンダーの手はドアノブからいまだ離れていない。
そして最後、アキナも片足を残して家を出る。
振り返って、言葉をかける。
「おじさん・・・・・寂しくなるね。」
アインアンデラへの挑発、だからといってそれに対して怒りやらの感情が乗るわけではなかった。アインアンデラは、その平たくも分厚い掌を自分の眼に覆いかぶせ、おいおいと泣き出す。
「さ・・・・寂しくなるじゃねぇかバカヤロー。おい!寂しいぞ!・・・・・・アンダー!いつでも帰ってこれると思ってるんじゃねえぞ!絶対に成功させろ!」
アキナはアンダーの手の力をほどく、そしてその背中を押す。外ではなく中に。
「オヤジ!泣いてんのか・・・・笑ってるのか・・・・ははっ、それじゃ分かんねえよ!」
大粒の涙は木造に跳ねない。
「てめえこそ、分かんねぇじゃねぇかよ!」
二つの泣く声、笑う声。
巨大な地下では響かない。それはひとつの家の中だけのものとなる。
しばらくして、何となく待っていたアスカ達の耳に再びアインアンデラの声が届くようになる。
アインアンデラが開く扉、そこからアンダーが出てくる。
アンダーがアスカ達三人の集団に混じる。
大きな荷物は、アンダーの背中を隠している。
最後の言葉。
「息子よ・・・・・いつでもかえってこいよ。」
アンダーだけが振り返る。
アスカ達は笑顔のまま前へと進む。ここへ来たときに通ってきた穴を見つめると、そこからは若干だが、陽の光が届けられる。
この地下において、小さくも珍しく太陽が昇った。そんな日になったのだった。




