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魔術的鍵師物語  作者: mono
第七

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分かれ道‐ここのつめ

 アンダーのプーベテートが解消された次の日、アスカ達は、アンダーからの相談を受けていた。


「曲はなんでもいいらしいんだけど、なに歌えばいいと思う?」


 アスカとアキナのどちらも頭を悩ませる。

 腕を組み、首を傾ける。傾けた髪が街灯に照らされ、火照っている。

 イエレナも首を傾けるが、帽子で頭を包んでいるせいなのか、それとも地下にいるため、風がないのか、イエレナの髪は揺れることはなかった。

 それでも、のほほんとした空気感は変わろうとはしなかった。

 アスカ達もアンダーの歌声をいまだ聞いていない。

 

「アンダーは、何か好きな歌ないの?」


 アキナが問うとアンダーが何かを思い出す。


「あっ!・・・・ああぁぁ。歌詞が分かんないや。それにメロディーも大して覚えてない。」


 アスカがノートの?と聞くとさらに続ける。


「うん。流石に歌えないけど・・・・また聞きたいなぁ。」


 コクジン。

 アスカも一度それを耳に、目にしている。普段は目にしない見た目に、普段は聞くことがないリズム感、嫌でも覚えている。

 

「多分・・・・・・俺も前聞いたことあるから・・・・・教えれる、かも。」


 記憶は紐づけられて残る。アスカの嫌な景色は強烈な愉快さの中にあった。

 記憶を紐解くように、頭に残るリズムを語っていく。

 しばらくして、音の理解はアンダーに移る。全員で家に戻り、ノートをもとに歌詞を割り当てていく。

 そしてついに約束を果たす時になる。それは、アンダーが父の背中を見ていた作業部屋で行われた。

 アスカ達を含む四人でアンダーを見守る。

 ここにピアノはない。それでもアンダーの口からはメロディーが生み出されていく。丁寧に丁寧に青く、強く、大きくもばらばらに。

 アインアンデラの瞳は真剣だ。なににも揺らぐことのない、仕事に向かう時と同様の目である。じっくりと瞼を上げ下げし、ようやく喋り始める。


「そりゃそうだな。息子ながら俺の血を引いてるなと思う。お世辞にも拍手は遅れねぇ。どんと・・うぉりーだか何だか、歌詞も俺には良く分からねえしな。」


 アンダーはこの語り口を知っているのかノートに手を伸ばす。


「雑だな。何もかも雑だ。若さを言い訳にするな。誰だって大人と同等になれる。体格のことを言ってるわけじゃねえ。スキルだ。ただ・・・・・・歌について俺がいえることはねぇ。技術だなんだも俺は知らねぇし。ただ、お前の歌には、生きがいってやつがなかったぜ。お前の死にものぐらいってやつがな。そして楽しさもな。」


 アンダーの筆は滑るように進んでいく。それはアインアンデラの、父の言葉が終わってもなお終わろうとはしなかった。

 するとアインアンデラは、アスカ達に詫びるように話し始める。


「あいつ昔からああなんだ。集中するとそれを書き留めないと仕方がねえ。俺の声が聞こえてるのか聞こえてえのか、指摘したことのメモはあるのに、声をかけてもそれを止めやしねぇ。」


 アインアンデラの笑みには得意げが混じっている。


「あいつ、きっとうまくなるさ。家具に対してもそうだった。ちいせぇ頃はてんでだったが、そりゃもう、磨きのかかりかたといったら、言葉になんてできやしねない。あいつは知ってるんだよ。努力の仕方を。」

 

 三つの指が伸びるごとに、その仕方というものが示される。


”続けること・諦めないこと・愛すること”


 みっつの教えが終わると、アインアンデラは指をおり、握った拳をゆっくりとほどいていった。

 アスカはひょいと立ち上がり、ノートを覗きにいく。確かにそこには父の言葉のメモがある。最初に伝えられて叱責、三つの教え。それと、涙の粒がぼたぼたと。

読んでいただきありがとうございます。

感想お待ちしています。

次話もお楽しみください。

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