分かれ道‐やっつめ
アンダーのプーベテートが治り、アンダーからはその白さや重苦しさのある様相は消え失せる。
「オヤジ・・・・・・話したいことがある。」
アインアンデラが表情を変えず、なんだと聞き返す。
「おれ、歌手・・・・・なりたい。」
ひとりの父として、頭を悩ませているはずのアインアンデラは、傍から見たらなんてことなく見える。
唾を飲み、乾いた口で問う。
「ひとえに・・・・成功と言える結果になる確証はあるのか?」
「そんなのやってみないと分かんないよ。」
「やってみないと分かんない?・・・・・・お前の才能はどこにある?」
アンダーは答えに困り、返事を拒む。しかし視線は確かに父の手を見つめる。
「家業はどうする?嫌いか?」
「そんなわけない!おれは・・・・・あんたに応援してほしい。否定しない欲しいだけだ!あんたにこれまでひどく否定されてきたわけじゃない。でも・・・・だからこそ何かを言われるのが怖いんだ。オヤジ!おれは、歌手を目指してもいいか?」
父の背中は大きい。だからこそアンダーはそれに拒絶されることに恐ろしさを感じていた。
アインアンデラが口を動かそうとする。
しかしそれは息子の声で静止させられる。
「おれはなってやる。どっちにもなってやる!家業も継ぐし、地上で歌手だって目指す。俺はどっちの夢だってかなえてやる!!」
「・・・・・両方・・・・」
アンダーの父は、背中を震わせる、かと思うと大きく笑い、腹を抱える。
「はっはっはっはっはーっはっはっはっ・・・・・いいぜ、なってやれ。お前の才能はどこにある?そんなの簡単だ。その美的センスとそれを追求する信念だ。いいね、存分にそれを使ってやれ!」
思わず笑いすぎたアインアンデラは、目尻から顔を出す涙を拭う。
アンダーも笑う。大きく笑う。そして決意の目を持って宣言する。
「おれはどっちも求めるよ。貪欲だ無謀だと言われてもそんなの知らない。なってやる。有象無象になってやる。」
その宣言とともにアスカは、劇的が好きと言うアインアンデラとアンダーの姿が思い出される。
似た者同士だなと笑みを溢す。口元を静かに隠すとともに、その親子の姿を羨ましく眺める。
「息子よ。おれはな、お前の腕はもう認めてる。だから家具づくりに対しては大したことを言うつもりはねぇ、しかしだ。せめて、てめえの歌声を聞かせくれよ。別にそれを聞いたらお前を否定するつもりはねぇ。ただてめぇの始まりを見せてから夢を追ってくれ。」
「えっ!?」
「明日な。明日みせろよ。」
そう言うとアインアンデラは家へと帰っていく。
再びその背中が、アンダーに見せつけられるのだった。
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