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魔術的鍵師物語  作者: mono
第七

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74/82

分かれ道‐むっつめ

 地下空間にあるトラディツィオーン。

 人目のつかない広場で、アンダーの心の世界が開かれる。


”アーフシュリーセント”


 アスカは、魔法を唱えるとともに、魔法の鍵をアンダーに目掛けて近づけていく。

 きらきらと光輝く黄金は、地下空間で万華鏡のように反響していく。

 アスカは、鍵を差し込み、それを捻る。


カチっ!


 その音ともに、アンダーの世界は開かれる。光りが溢れ、地下に一つの星が生まれる。その存在を主張するかのように煌めき、地に落ちる。

 それでもひかり続ける。

 その眩しさに、周囲の人間、アスカ、アキナ、イエレナ、そしてアンダーとアインアンデラは眼を眩ます。

 そして現実の世界で眩んだ目を開いたのは、アスカとアンダーを覗く三人。

 アスカは眼を開くことなくゆっくりと意識を失っていった。


「だっ!」


 アスカが目を覚ます。そして勢いよく起き上がり、周囲を確認する。

 アスカの見る世界は現実の世界と変わっていない。しかし違う点がないというわけではない。アスカは今、ひとりだった。

 アンダーがいない。

 アスカは歩き、そして辿り着く。

 数日前に見たあの家、アンダーの手がかかったあの家にである。

 アンダーはそこにいたのだった。


「アンダー。」


 家の中に入るとアスカの瞳にアンダーが入る。

 黙々とひとつのノートにペンを走らせている。

 しかしアスカが声をかけたことでそれが止まり、アンダーはノートを閉じる。表情は固く、怯えているようにも見える。


「お、おれをはやくなおしてはくれない?こんなところで、おちおちやってる場合じゃない。」


「おちおち?」


「おれには夢がある。」


 アスカは、自信なさげな表情のアンダーに声をかけようと言葉を作ったが、それは喉に詰まることになる。


「おれ、歌手になりたいんだ。」


 はっ!?と思わず、驚嘆が漏れる。まったくの予想外に汗が落ちる。何の温度もないそれは、ただただポチャリと地で跳ねる。

 そして直線の彫りにそって流れていく。

 アスカは、さらに話を誘う。


「この前おれは、歌手にもなりたいと思ってしまった。地上から人が落ちてきたんだ。その人は、肌も黒いし、言語も曖昧。それでも、おれ、彼に影響されちゃった。彼の歌声に。」


 アスカにも心当たりがある。黒い肌とおぼつかない言語、コクジンだ。アスカは腕を組み、適当に座り、上向きに悩む。

 アインアンデラ、アンダーの父は、彼が賢いと言っていた。きっと家を継ぐと言っていた。それが今、彼の口からは一言も出てきていない。


「お父さんには言ったことあるの?」


 アスカが問うと、いやっとアンダーが首を振る。


「言えないよ。怖い、否定されるのが。だっておれはあの人の子供で、あの人はおれの父親だもん。その関係は切れないから。なにかを言われたらそれには断れない。親だもん。それに歌の才能があるかも分かんないし。もう何も分かんない。怖い・・・・怖い・・・・挑戦したいのに、膠着している今がとても・・・・怖い。」


 アンダーは俯く。

 髪は垂れ、彼の視界を遮る。

 そのせいか彼には見えていなかった。いつのまにか山となる、ぼろぼろのノートが彼には見えていなかった。


「家具・・・その・・・・・家業は何年やってるの?」


「わかんない。気づいたら。」


「気づいたらか。アンダーはすごいな。俺にはそんなに長くやってきたことなんてないよ。ていうかアンダーはいくつ?」


「16。・・・・おれ16年近くも、やってきたのかな?」


 アンガーを讃えるためか、アスカは積み重なるノートを指さす。


「おれは・・・・・・」


 アンダーの答え。

 予想できるのは二つである。家業か歌か。


「俺は知ってる・・・・努力の仕方を知っている。だから!・・・・歌手にだって・・・・なれる!」


 アンダーは顔をあげる。そこにあるノートを撫でながら、前を向く。

 世界は崩れ、場面は実態を持ち始めていく。

 その最後、アンダーはアスカに一言告げる。

 「おれ、劇的って好きなんですよ。」と。

 そうしてアスカの意識はふっとなくなるのだった。

読んでいただきありがとうございます。

感想お待ちしています。

次話もお楽しみください。

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