分かれ道‐ふたつめ
大きな大きな穴を颯爽と滑り、依頼先の国に辿り着いたアスカ達。
三人は穴から放り投げれ、絶賛、落下中であった。
「うわああああああああああああああっっっ!やっばあああいい!!」
アキナは既に声をあげることもできなくなっている。力の入っていない両腕を風になびかせ、イエレナとともに、無音で落ちていっている。
しかしここで、甲高い笛の音が鳴り響く。
アスカが音の方向に視線を向けると、既視感のある黄金の光が目に入る。地上から漂う黄金の中に微かに人影が混じっている。
”シュプリンゲン”
微かに耳に入る魔法の名。それとともに、黄金の光がアスカ達に届き、三人を包む。
アスカは、それを信じ切るも、地に叩きつけられる瞬間、思わず目をぎゅっとする。そしてあらたな浮遊感に襲われる。
地上に間近であったアスカ達は、再び宙に浮かび上がっていた。いや正しくは、跳ね飛んでいたのだった。
そうして二度三度、バルーンのように跳ねると、しだいにその勢いはなくなっていった。
ぼよ、ぼよよと跳ね終わり、勢いが落ち着いていくと三人から黄金が包む光は消えていった。
アスカは、喉元にある気持ち悪さを抑えながら、魔法を放った人物に感謝を述べると、仏頂面のまま、所在を尋ねられる。
「あんたらは、この国に用があってきたのか?それとも、たまたまあの穴にかかっちまったのか?」
別に罠ってわけじゃねんだけどなとポリポリと頭を掻くきちっとした格好の男は、アスカ達が用があってこの国に来たと知ると、気をつけろよと念を押し、すぐにどっかに行ってしまった。
「なんだかくたびれてたわね。・・・・結構落ちる人いるのかしら?」
いつのまにか気を取り戻しているアキナが、斜め上にある穴を眺めている。
「いやぁ死ぬかと思った。」
「冗談じゃ済まされないわよ。」
真顔のアキナにデザート・・・とぽつりと言うが大したことはなかった。アスカが涙目になるだけで済んだ。
アスカは腫れる頭を抑えながら依頼書を取り出す。
「行きますかね。」
力ない言葉とともに歩き出す。
明るいわねというアキナの言葉からアスカは周囲を見渡す。
地下に眠るこの国には、炎のような暖色の明かりがいくつも置かれていた。ぼんやりとさせてくる眠たくなるようなその色は、情緒にあふれた建造物を際立たせていた。
「なんか、雰囲気あるな。」
アスカがなぞるように、次々と視線の先を変えていく。
木造の家は深紅に染められ、陽の光が届かいことでそこには暗さが存在している。炎のような灯りはテカリでさえも表現している。
なにより、そこらの建造物は、その直線が鋭くも美しさを誇っていた。
機能性と実用性を追求したなかでの幾何学模様。
三人にとって、それは異質に思えていた。しかしそれが美であるという感覚も持ち得ていた。
見知らぬ声。
「おぉぉい。あんたらもしかして鍵師に人かいな?依頼ならここをまっすぐ行ったらよいぞ。」
髭の生えたよぼよぼの老人。片手の杖がなければ立っているのもやっとなほどであった。プルプルと震える右手の皺のまま、前方を指さす。
「わ、わしの孫なんじゃよ。何とかしてやってくれ。」
アスカは、童心を折りたたむかのように、大胆に一歩を踏む。
一歩、また一歩と進んでいく。後方で聞こえる、孫なんかいないでしょという女性の声に振り返ることなくドンドンと進んでいく。
しかし運よく方向は間違っていない。
「ごめんくださぁい。」
三回のノックは依頼の始まりといっても過言ではない。
そうして扉が開かれるのだった。
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