分かれ道‐ひとつめ
親殺し関係の依頼をこなしつつあったアスカ達は、手元に残る依頼書の数を着々と減らしていっていた。
そんな中、焚火に照らされるアスカは体に残る傷を撫でていた。
「結局ヌーアインシャテンとは闘うほうが多いわよね。」
アキナは、よれよれのタオルを絞り、アスカの体を拭いていく。
「まぁ仕方ないの。向こうから動かれて、襲われる形になっちゃうと、倒すほうに切り替えたほうが・・・・・ほうがというか、倒さないとこっちがもたないしね。」
応急処置をされるアスカが、前に座らせたイエレナの手やら頭やらを見ていく。
「イエレナは問題なさそうだね。ぼろぼろなのは俺だけかぁ。まっ、寝たら治るか。」
からっとした笑いは、エルフと別れてから増えてきている。そこに特段、感情やら情動やらはない。自然なままの笑顔である。
アスカはぐんと体をのばすと、そのまま敷いてあった布に身を預ける。
「ひとまず明日に備えましょ。」
「へーい。おやすみぃ。」
アキナも荷物をしまい終えると、すんなりと眠りに落ちていった。
朝。
じわじわとした暑さの中に、雨の名残が残っている。
夜中に雨を凌ぐために、わざわざ洞窟に移動したおかげか、三人ともたいした被害は受けていなかった。
そしてなんてことなく次の依頼に向かっていく。
「ん?」
アスカ達は、分かれ道に遭遇する。それはあまりにも分かれ道である。
一本の道の続きは、二又に分かれ、果て無く突き抜けるように道が続いている。
そして木々一色の周辺で、片方には太陽が見え、もう一方には、ただの青空が見える。
「どっち?」
アキナがアスカの持つ依頼書を覗くと、見ても分からないでしょっと小言をつかれる。
しかし、次に発されるアキナの言葉に、思わずアスカが吹き出す。
「うわっ、これ・・・・真っ直ぐだ。」
「笑わせないでよ。真っ直ぐ?冗談はデザートの後にして。」
なんだその言葉と、掘り返しそうになるアスカだったが、それよりも意識を向けるべきことがあったため、それはやめておく。
決してアキナが怖かったからということではない。
うーんと頭を悩ませつつ、アキナの笑顔を瞳に収めながら分かれ道ではなく、真っ直ぐを塞ぐ草木を掻き分けていく。
するとアスカの重力が存分に働くことになる。浮遊感に包まれ、地上にいるにもかかわらず、アスカの体は空間に落ちていく。
「うわあああああああ。・・・・ああ?」
アスカはすんでのところで、地上に戻される。イエレナにその身を抱えられたアスカの目に飛び込んできたのは、大きな大きな穴であった。人一人以上が通ることができそうなその穴は、どこまでも続いている。
アスカの少年心が踊らされる。依頼の先がこの先にあると直感したアスカは、思いきり飛び込む。
先ほどとは、異なり、整えられた体勢で颯爽とそれを滑り、下っていく。
風が過ぎ、思わずを眼鏡を抑える。後ろを見ると、イエレナが、聞き覚えのある悲鳴をおぶりながついてきていた。
二つの黄金の髪は、流れ星となり、どんどんと地中に潜り込んでいく。
するとようやく微かだった光が明らかなものとなる。
「ひゃっほーい。」
穴の終着点。そこはひとつの国に繋がっていた。
トラディツィオーン。何百年と続く一大国家。
新たな出会いが始まる。
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