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魔術的鍵師物語  作者: mono
第二

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7/25

ぼんやりさん‐ひとつめ

 プーベテートの病。この病にかかったものは、喋ることも寝ることもままならない。

 疾患者の肌は白くなっていき、その華奢さが目立っていく。

 なによりこの病に関してよく知る者の数は少ない。


 アキナの故郷を出てから三日ほど経った日、彼らはいまだ野宿をしなければならないような場所にいた。


「ねえ、いったいいつまで野宿するつもりなのよ。宿で眠れるようになるには、あと何日ぐらいかかるわけ。」


 川の字なって寝ている三人のうちの一人、赤髪を綺麗にまとめたアキナが夜空を見ながら、アスカに問いかける。


「うーん。依頼を受けないことには、目的地が決まんないし、ていうかそもそもそんな金ないし。」


 夜の春風に凍えるアスカが、眠るのを諦めたのか眼鏡をかけ、星を眺め始める。


「はぁっ!今金ないって言った?あなた達、依頼を受けて治療してるんでしょ。報酬ぐらいもらってるでしょ。」


「ふふっ。思い出してごらんなさい。君の両親を。いったいいつ報酬を渡していたというのだね。」


「!!・・・ああ、そんなぁ。」


 落胆する声をあげるアキナは、夜空から視線を外し、毛布をひっかけながら寝返りをうつ

 そんなアスカは体を丸めながら、足をばたつかせている。

 それは寒さが理由だけではなく、この状況ですらアキナには新鮮で、楽しく、喜ばしいことであったからである。しかしそれも今の内だけであるが、それはまた別の話である。

 アキナ、そしてアスカに挟まれた場所で横になっていたイエレナが突然、上体を起こす。そして上空に指をさす。

 ひらひらと空から何かが落ちてくる。

 いくら紙であれど、それなりの高さから落ちてきたそれは、かなりの衝撃があったようで、アスカのデコに若干だが刺さる。


「いったああぁぁ。なんだぁもう。」


 かぶっていた毛布を放り投げ、デコに刺さる折りたたまれた厚紙を開く。

 するとアスカは、ニヤリと笑い、アキナの方向に顔を向ける。

 伝書バトが落としていったそれは、アスカ宛ての依頼書。新たな行動原理であった。


「決まったよ。次の目的地。次は夢の王国トラオムだ。」


「夢の王国・・・・。ふふっ早く向かいましょ。」


 いつの間にか地に背中をつけているイエレナの上でアスカとアキナが拳を合わせる。

 そして互いに布団に潜り込み、二人して小さくも叫ぶ。


「「寝るぞおおぉぉぉぉおお。」」


 二十歳まじかの少年少女の声が、夜空に響いていく。それも次第に夜風に吹かれ、声の熱が冷めていく。 

 星が回り、時間が過ぎていった。

 鳥の羽ばたく音が、目覚ましの合図となり、二人がそれぞれ目を覚ましていく。

 眼鏡をかけていくアスカ、しょぼしょぼの目を擦るアキナ、視線を蝶に翻弄されているイエレナ。

 今日は、かなりのお天気であった。

 張りつめるような朝日に負けることなく三人は、依頼者のいるトラオムを目指していった。


「あれがそうじゃない?」


 アキナが目を凝らした先には、城壁に囲まれつつも、お城のてっ辺が顔を出していた。


「確かに、あそこかな・・・。俺も初めてだから分かんないけど。」


 温暖な気候であるのか、三人の歩く道には、少しばかり早とちりをした花々が咲いている。

 トラオムに近づくほど、その城壁の大きさというものがありありと分かるようになり、先ほどまでのぞき込んでいたお城の頭は見えなくなっていった。


「着いたわね。・・・門・・・入って良いのかしら。門番とかいないけど。」


 アキナが周囲をきょろきょろと見渡すが、特段かしこまった服装をしている人間もいなかった。

 大々的な国同士の戦争が終わってから、約70年が経とうとしているこの世界。平和に慣れ切った国ほど名残を残すばかりで、甘い体制に落ち着いていったのだろう。


「ほかにも入っていっている人もいるし、だいじょぶなんでしょ・・・多分。いざ行かん。夢の王国トラオム。」

 

 アスカを先頭にして、いよいよ王国に入っていった三人。

 ここでもまたアスカは、魔法の鍵を使うことになるが、その心に微かなしこりを残すことになる。

読んでいただきありがとうございます。

感想お待ちしています。

次話もお楽しみください。

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