三人の始まり‐むっつめ
村一番の大きさを誇る出来の良い家。
そんな家の扉が雑に、そして勢いよく開かれる。
太陽の届かない家の内側は、青いような日陰を作っていた。
風の揺らす窓は、カタカタと音を立てている。
「・・・・・だから私は、この家を出るわ。私は私だから。もうあなたの言いなりにはならない。」
そう言われたアキナの父は、こんなこと言われるなんて思いもしなかったといわんばかりの顔で、唇を震わせている。気弱な指で自分の娘を指さし、苦笑いをつくり始める。視線の先を自らの妻に移し、娘の言ったことが確かかどうかを確認するためか、口を開いたまま眉をひくつかせ、訴えている。
アキナの母は、なにもしゃべらなかった。自分にはなんの権利もないことが前提であるかのように。
「ねえ、なんか言ったら。・・・・なんもないならもう行くけど。・・・・・・・はあ、じゃあね。」
「まって。」
立ち上がったのは母だった。涙ぐんでいる母。対する父は、よほど飼い犬の反逆が予想外だったのかいつまでたっても指を震わせている。
「帰ってきて・・・・いつでも帰ってきていいのよ。」
アキナは、迷った。どんな言葉を吐くべきか。どの感情で親と向き合うべきか。そんなことアキナには分からなかった。
薄暗い部屋。外は特段天気は悪くない。むしろ快晴といっていい。
彼女は一言だけで己の行動へ移っていった。
「うん。わかってるよ。」
二回に上がり、荷物をまとめる。ゆったりとしていたワンピースを脱ぎ、隠していた肌に沿うパンツやら服やらを身にまとい、一段ずつ階段を下りていく。
両親の顔を眺め、外への扉を開く。最後に、気になっていた点、部屋の明かりをつけ、アキナは外へ出た。
外は快晴。これでもかと晴れ渡っている。
そこらの家をみても中は、外ほど明るくはない。各々灯りによって、どうにか明るさを保持している。
心の中で数回頷き、強く前を見る。
ゆっくりと歩いていたアキナであったが、気づきとともに少しづつその歩みを速めていく。
「言ってきたわ。パパにもママにも。」
「そう。よかった。」
「よかった。そうね。良かった・・のよね。なんか・・・・なんだか胸がざわざわするの。これは、本当に・・・これでよかったんだよね。」
「後悔してる?」
「ううん。まったく。ねえ早く行きましょ。」
アキナの言葉を了承したかのようにアスカは微笑み、村を背に歩き始める。
その後ろをイエレナ、アキナがついていく。
アスカは掌にある鍵を懐にしまうとともに、自分の父がいなくなった日を、父からこの鍵を譲り受けた日を思い出す。
空が晴れている。雲一つなく。
きっと今の空を眺めた時、誰もが自分こそがこの空の中心であると認識できるだろう。そうきっと当事者意識なのだろう。勇気を出す時というのは。
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