三人の始まり‐いつつめ
「何なのよあれ。というかなんなの、今日・・・もうめちゃくちゃよ。」
アスカにもたれかかりながら嘆くアキナだったがしかし、アスカも口に入り放題であった砂でそれどころではなかった。
「ぺっ、あれは、ぺっ、”ヌーアイン・シャテン”。君の影、まあなんだ治療をした時のお決まりの奴って感じ。なかなか厄介だけど、倒したら君は完治。まあイエレナならだいじょぶだよ。」
「確かに・・・竜も追い払ってたし。ねえイエレナが強いのは、なんでなの?あれも魔法?」
「ううん。魔法じゃない。プーベテートになってから、ああなんだ。でも別にプーベテートにそうゆう作用があるわけではないし。だからイエレナだけ、多分ね。うげっ砂嚙んだ。」
呑気に話す二人を前に、相対する二つが動きを見せ始める。
二足で立っていたヌーアイン・シャテンは、その余っっていた二本の腕を使い、四足で走り出す。弧の軌道を描くように、駆けだしたそれは、イエレナの左腕へ襲い掛かる。口を大きく開いたヌーアイン・シャテンは、その鋭さのある牙を見せ始める。
するとイエレナは、左手をそれに向けて突き出し、大胆に広げた掌で奴に標準を定める。
ほんの数秒、対峙する二つの勢いがぶつかるまでには、ほんの数秒しか要しなかった。
ドン!!!
鈍く広がる音。波打つ空気が伝えたのは、イエレナがアキナの影を撃ち崩した音であった。
イエレナは、左手で合わせた標準に沿うように、右手を放ち、一撃でアキナのヌーアイン・シャテンを倒してしまっていた。
衝撃に負けた木の葉が、ゆったりと落ちていく。
イエレナの指は、病のせいで白くなってはいたが、拳を奮ったことにより赤みが見えていた。
しかしイエレナはそこに意識を向けようとはしていなかった。倒すべき存在がいなくなった彼は、ただ、ただ前方を眺めていた。
「・・・いつもありがとうな。イエレナ。」
アスカは、手に持った帽子と布切れを丁寧に弟に被せていく。そしてイエレナのそばかすを触りながら、自分の弟の目に映る自分と目を合わせる。
悲しげに瞼を伏せ、イエレナのそばかすを触り、次には自らの頬、つまりはそばかすのない頬を擦る様に触れる。
「?」
不思議そうに眺めていたアキナであったが、二人に近づきながら自分の勇気を思い出す。
「私、言うわ。パパにもママにも家を出て、私の人生のレールを見つけるって。だから二人ともありがとう。」
「村の入り口までは、送ってくよ。一応何があるか分からないからさ。」
「ありがと。」
村へ向かう途中、アキナは言った。村には自分以外の子供がいないこと。同世代の子供と喋ったのも久しぶりであったこと。自分が次女であるということ。そしてアスカとイエレナと友達になれていると思っていること。
三人は、行きのことを思い出し、ドラゴンに襲われない道で帰ることにした。
あるものは頭に刺さる木の枝を気にし、あるものは前方の草木を掻き分けている。そしてあるものは、自分の身なりを少しばかり気にし、若干の胸の動悸を抑えようと努めている。
ようやっと三人は、道というべき道に出る。
申し訳程度の門。見栄っ張りのためのように思わせる村の入り口に到着する。
「いってくるわ。・・・とりあえずありがと。」
走り出したかと思えば、すぐにアキナが足を止める。
「ねえ、あなた達についていっていい?もし良いならさ、ここで待っててよ。」
今度こそ進み始めたアキナは、白のワンピースを風で揺らめかせている。背中に触れているはずの赤髪は宙に浮き、きっとあの黄色い瞳は、太陽に映されるのではなく、太陽でさえも瞳の中に収めてしまうのだろう。
アスカは、懐から黄金の鍵を取り出し、それを強く握りしめるとともにアキナの言葉通りに彼女を待つことを選んだ。
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