表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術的鍵師物語  作者: mono
第六

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/76

妖精‐じゅっこめ

 ひとりの少年を見送ってからしばらくたって、アスカは再びザーゲンの顔を見る。

 

「荷物・・・・・すごいな。」


 アスカが見まわすザーゲンには、大きな荷物がおぶさっている。

 ゆったりとした服に着替えてきたザーゲンのその顔は飄々としている。そして体と服には十分な余白がある。


「まぁ旅に出ようと思ってるんで。」


 「旅?」と首を傾げながら、歩みをアキナ達のところへと進めていくとそれにつられてザーゲンも歩き始める。


「本当はエルフを村に戻せるように何とかしたい。けど・・・・・俺にはどうすることもできない。力が無い。だからというか、自分は本が好きだから、本を書いて、エルフが普通に暮らせるように・・・・・エルフの存在を世界に広めて、エルフだって普通なんだって教えたい。それで、それを叶えるのと一緒にエルフの傍にも入れたらなって。だから俺も村を出て、エルフと一緒に、って感じです。」


「親はなんて?」


 ザーゲンは答えなかった。

 事実、ザーゲンは言い切る形でこの決断をした。あの母親もザーゲンを何度も止めた。しかし最後には、ザーゲンの切れのある言葉でその手を引いたのだった。


「・・・・・いままでありがとうって・・・・・ちゃんと言ってきましたよ。」


 アスカはそれに対して何も言わなかった。何かを言えば、それは叱責になると直感していたからだ。

 

 しばらく歩くと


「あれ、そうじゃない?」


 すっかり夜になったこの地に、ぼんやりとした火の明かりが見えてくる。

 草むらを掻き分け、アスカとザーゲンが踏み入る。


「なにしてんの?」


 アスカが不思議がるその光景とは、アキナがイエレナの頬を横に引っ張ているそんな様子であった。

 

「実は、・・・・・ううん見てもらった方が早いわ。エルフちゃんもう一回頼める?」


 そう言われたエルフは、ぱっと笑顔になり、任せてっと張り切る。

 エルフはイエレナの胸のあたりに耳を当て、しんと目を瞑る。


「ふむふむ・・・・・・なるっほど。ァ、アスカお兄ちゃんおかえりっ、だって。」


 きょとんとするアスカと手にペンを持ち始めるザーゲン。


「エルフちゃんはね・・・・なんと心の声を聞くことができるのよ。ちなみにこれまでの治療のことを聞けてたから、本当かどうかは、もうお墨付きよ。」


 自信ありげにアキナが言う。腰に手を当て胸を張るとエルフもそれを真似る。


「付きよ!」


「じゃぁ、なんでアキナはイエレナの頬をつねってたんだ?」


 アキナは、ごにょごにょと狼狽えながらアスカの唇を見る。


「なんもないよ。そっ、それよりもアスカは何か聞きたいことないの?」


 アスカはエルフを見る。

 そしてエルフはアキナの手を握っている。

 沈黙のアスカ。

 痛みの引いた自分の手に意識を向ける。


「俺は・・・・なにも・・・。」


「いいの?イエレナ君、なにか言ってるよ?」


 エルフは再びイエレナに近づき、耳澄ますのだった。

読んでいただきありがとうございます。

感想お待ちしています。

次話もお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ