妖精‐よっつめ
ベギンにたどり着いた四人。
ゴタゴタを避けるためにひとまず宿に入ると、エルフが癇癪起こしそうな声を出しながら、アスカに被せられた服を剥ぐ。
しかし身軽になると、また笑顔を周囲に配る。
「えへっ、帰ってきたぁ。アキナちゃん、ありがとう、ご、ございます。」
「どういたしまして。」
アキナが目線を合わせる。
「・・・・・しばらくはここにいようか。」
うんと頷くとエルフはアスカとイエレナに近づき、何で遊ぶ、と首を傾げている。
アスカも笑顔を返すと、エルフの頭を撫でる。
イエレナの頭も撫でる。
「ごめんね・・・・俺はちょっと用事があるから。イエレナと遊んでて。」
アスカがイエレナの持っていた依頼書を借りる。アキナに視線を送り、ついてきてと伝える。
外の天気は晴れ。
「ごめん。・・・・・その、ごめん。」
「・・・・・・」
アスカは手の甲をもう一方の手で覆っている。
アキナはアスカのポケットにしまわれた依頼書を強引に引っ張りだす。それを見たかと思うと、ぐるぐると回しながら、アスカを先導しようとする。
しかし足音のしない隣に気づくとその歩みを止める。
アスカは指を指しながら
「もう・・・ついてます。」
アキナは、依頼書をしまい、小走りで戻る。
アスカが扉を叩く。
「ごめんください。」
開かれる扉から手を拭いている中年の女が顔を出す。
鍵師の方?と笑顔を貼り付け、首を傾げる。そしてそれの正体が判明すると、アスカとアキナを家にあげる。
「こんなのしかないけど、ごめんなさいね。」
フランクな喋り方のおばさんが、茶と菓子を出す。
アキナはすぐにはそれに手を伸ばさず、しばらくコップを観察すると、心のなかで飲まないことを決意する。
アキナが紙で包まれた個々の菓子に手を出したところで、アスカが口を開く。
思ったほどの重さがなかったのか、アスカの言葉は、二重に重なる。合間合間で喉を鳴らしながら進めていく。
「あ、えと・・・・・お、お。・んんっ・・・治療が必要なのはお子さんですかね?」
「?・・・・・・・ええ。そうです・・・なにか喉に飼われてるんですか?」
すいませんとアスカは俯き、眉による陰をつくる。
見下す目線は分かりやすい。目尻と口角がついてしまいそうな表情。
あるのは悪意。
アキナが出された小汚い湯飲みを握る。そしてもっともっとと力を強めていく。
ついに意を決した言葉が放たれそうになった時、思わず湯飲みの茶が跳ねる。
「悲しんでそうな音はここかぁ!!」
大きな口をさらに大きく開けたエルフが、勢いよく入ってくる。
そしてその小振りな手はイエレナを引っ張ている。そんなイエレナはあまりの勢いで、若干宙を舞っていた。
いきなりの来客。
湯飲みを握っていたアキナは過敏に反応し、膠着したまま手を振り上げる。当然、中にある茶は飛び跳ねる。
偶然か必然か、それは綺麗に弧を描きながら、中年のおばさんの頭めがけて降り注いだのであった。
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