妖精‐みっつめ
1日が経ち、4人は再び歩き出していた。
アスカも重たい体を精一杯動かしている。アキナを見る。イエレナを見る。エルフを見る。アスカは口を紡ぎ、脚を動かすことにすべての意識を注ぐ。
「エルフちゃん・・・村の名前覚えてる?」
迷子の少女と出会ったことにより、3人の予定は少しばかり変更された。目的の依頼ではなくエルフの手助けを優先することを選んだのだった。
「ああっと・・・ベギンってとこだよ。そこはね、ね、雪がきれいなの。」
雪かぁと天を仰ぐアキナ。その目には晴れ晴れとした青空と、芽吹いたばかりの緑の葉が映る。しばらくしてその村の語感に意識が向く。
ベギン?っと目を瞑り考えると、イエレナに託した地図兼依頼書を見る。
「次の依頼場所だ。」
アキナはこの偶然を笑う。つられてエルフも笑う。
「はははは・・・・ああ面白い。こんなことってある?ねぇアスカ・・・・・」
「ん?ああそうだね。・・・・・へへっ」
笑う。
アスカの頭の中には、道端にある草むらの心地よさの誘惑しかなかったが、何とか笑ってみせる。
不思議なもので、アスカの体には草むらに引き寄せられるような重力以外の引力が引っ切り無しに働いていた。
それでも今日は休むことなく、アスカは歩いていく。
陽が沈んでいった頃、目標としていたベギンが見えてくる。
ひとつの村。そこには雪はない。
4人は、その村に足を踏み入れる。
別になんてことはない。村に来客がいるのだ。多少の視線は致し方ない。
そう多少の視線なら致し方ない。しかし耳に触る言葉がまぎれる。
「うわっ・・・・帰ってきた・・・・まじかぁ。」
アスカが思わず、「はっ?」と苛立ちの声をあげる。アスカもイエレナもこの村に来たことはない。そうなるとアキナも来たことがあるはずがない。
エルフだ。言われているのエルフだとしか考えられない。ただでさえ、本人も迷子だといっている。この村に関りがあるのはエルフしかいない。そう思考が巡る。
腹の底で、憂鬱が渦巻いていたアスカは、その一瞬は、その重さを忘れる。
歩く。
走る。
村人を前にする。
「さっきの言葉、なんだよ。」
「な、なんだよ・・・・・おたくらかあいつをここに戻したのは。悪いが、村で決めたことなんだ。部外者は首突っ込まないでくれねえか?」
アスカの瞳孔は、大胆に開く。しかし呼吸が進むほど、吸い込んだ息が胃の中に溜まっていく感覚になり、また体が重くなっていく。
しかたなく3人の元に戻り、大人しくなるエルフに身に付けていた身ぐるみを1枚被せる。
そうしてアスカ達は、ひとまずそこらの宿に入っていった。
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