妖精‐ふたつめ
エルフを連れて川から戻ってきたアキナに魔法の書を開いているアスカの姿が目に入る。黙ったまましゃがみ込み、横になるアスカに添う。
「ねぇ・・・さっき川に行ったんだけど、そしたら迷子の女の子見つけて、一緒に連れて行かない?」
アスカは、魔法の書を開いたまま、木のみをすりつぶしたかのような掠れ声で呻いている。
イエレナも二人に近づく。じっとエルフの顔を見つめる。
「エルフちゃん・・・何歳?もしかしたらイエレナよりもお姉さんかな?」
エルフが片手をパーで突き出し、はきはきとした声で15と宣言する。
アキナは腰を曲げ、愛でるようにエルフの頭を掻きながら、違和感を誤魔化す。
「かわいいねぇ~」
エルフは、まんまるの顔が平たく伸ばされながらも笑い続ける。
その間もイエレナはじっとエルフに視線を与えている。
「ねぇアスカも・・・・」とアキナが後ろを見る。アキナの背中では、いつまでもアスカが毛布に身を隠している。しかし声をかけられたせいか魔法の書を閉じる。
「・・・・・魔法の書・・・なにかあったの?」
アスカはさらに身を屈める。それは毛布の動きからわかり、その皺が増える。
「ああ・・・・・・あーうん。なんか本に・・・・・知らない・・・・新しいページが・・・増えて、た。」
「へぇ、新しい魔法かなんか?」
アキナがもう一度問う。
「新しい魔法?」
いまだ日は落ちていない。しかしアキナに1日分の疲れが見え始める。
「はっきり・・・・・・・もっとさぁ・・・・・」
アキナの歩みが進む。大地に溶けるアスカへと向かう。
ぐんとアキナの手は引っ張られる。膝を砕かれたかのように、姿勢は崩れ、アキナの頬が地面に近づく。
エルフだ。小さな彼女がアキナの手を掴む。その表情には、不思議と意図が含まれていない。ただあるのは、無垢な笑顔と過敏な感受性であった。
「私、み、みんなと仲良くっなりたい。」
川のせせらぐ音が聞こえる範囲にあるこの場所。木々の地盤によって安定したこの場所には、幾重もの陽の光が、緑の葉をすりぬけて大地を照らしてくれている。
鳴くはずもない岩からは、自然が響く。
「そうよね。・・・・・・・私アキナ。よろしくね、エルフ。」
アキナが見つめるエルフ。つぶらな瞳は一重の瞼に囲まれ、黄緑と黄金の混じった髪色は自然の世界に溶けて消えてしまうほど純できれいなものである。
「こっちの体中が服で隠れてるのはイエレナ、それであっちの寝てるのはアスカ。」
アキナが指を指す方について回るようにエルフは視線を動かし、ふんふんと頷いている。
満面の笑み。
「よろしく!!」
ひまわりのようなその笑みは、太陽に熱く照らされているのだった。
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