父さん‐じゅういっこめ
ヌーアインシャテンが消滅し、胸を撫で下ろすアスカにアキナが飛びつく。
「なに・・・してんのよ。急に、ヌーアインシャテンに近づいていって、びっくりするじゃないの!」
「まぁ・・・そんなときもあるよね。・・・・・ごめん。でも・・・・倒す必要がないなら、イエレナも・・・・・。」
飛びつかれたままの衝撃で倒れこむアスカは、両手を野原に広げたままになる。
「そうね。早く、イエレナの声聞いてみたい。」
「うん。・・・・・あの・・重いんですけど。」
アスカに抱きつき直してからゆっくり離れる。
そんなアキナに肩を貸してもらい、アプシートに戻っていった。
当然カンナイと一緒に帰ったが、道中、魔法のについての質問攻めに遭う。やはり魔法はロマンの塊らしい。
そしてカンナイの家につくと、寝転がる大人がいる。カンナイの両親だ。
プーベテートが治ったことで、カンナイの肌は、血色の良い本来のらしさが出てきている。しかしそこにいる二人は違う。氷のように透明で凍えている。
カンナイは無理くり笑う。
「後で、えらい人たちに謝んないと。弔うために来た人たちのこと、返り討ちにしちゃったんだよね、ぼこぼこに。あぁあ・・死んだ人間は帰ってくるはずないのに・・・何を期待してたんだろ。」
後日、カンナイの両親はカンナイの懐に収まるほどになった。正しく弔われ、彼らは天に昇っていった。
死んだ人間はもう二度と喋ることはない。しかしプーベテートはどうであるか。
死んだ人間は弔うほかない。しかしプーベテートはいまだ戻ってくることができる。
アスカは問う。鏡の映る自分に問う。
「父さんは人を殺した。俺は殺していない。・・・・・・父さんはイエレナを助ける可能性をつくりだした。俺はたまたまイエレナを助ける可能性を見つけれた。・・・・・たまたま・・・・・。」
何日かしてアスカ達は船に乗り、ヴィーダーに戻っていった。
再会は一度には終わらない。
アスカは再び、父親に会うためヴィーダーに来たのだった。
酒場に立ち寄ると、ハッセンが1人で、酒を飲んでいる。その後ろでは、心地よいリズムで歌声が刻まれている。
その正体は、盲目のコクジンとかいう男。はるか遠くから、海を彷徨いこの地に流れついたらしい。言語はまったく異なるが、文明に違いというものはないとのこと。
ハッセンがアスカに気づき、近づいてくる。
「コクジンが気になる?・・・・・肌が黒いらしいから黒人っていうだって。」
「・・・・・黒?・・・・・黒っていうか茶色じゃない?」
普通に話す。
「・・・・また聞くけど、父さんはどこにいる?」
「そうだな~、条件つけていい?・・・・・・・・・・また砂浜にいるよ。海でも見てんだよ、きっと。」
残念がるハッセンは、目に刺さるほどの前髪をいじり、何かを考える。
アスカは酒場を出る。しかし頭の中ではいまだあの軽快なリズムが離れずにいる。
いまだ月は黄金にはなっていない。静かに凍り付いている。
昼間の太陽に顔を向けるアスカの父。そのひとりの人間としての背中をアスカは見つけ出すのだった。
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