父さん‐やっつめ
カンナイの心の世界。そこは書籍で囲まれた世界であった。どれもこれも分厚く、使い込まれた色褪せ方をしている。
書館のようなであり、椅子と机、カンナイが一人座っている。
アスカはカンナイの背中から近づいていく。
すると、どこからともなく椅子が現れ、机の向こう側、つまりはカンナイと対面する位置に落ちる。
「相席・・・よろしいですか?」
アスカは本を開いているカンナイに声をかける。
「どうぞ。」
大人びた喋り方をする少年の前にアスカが座る。
すでに読まれたであろう山となっている本を一つ手に取る。
「本・・・好きなの?」
「うん・・・・・・。」
ページをめくっていく。
「ずばり・・・その理由?」
「・・・・正解があるから。ノベルでも図鑑でも、医学書でも・・・・なんか因果?がある。」
またページをめくる。
「・・・・・因果?」
「うーん・・・・正解がある、みたいな。」
アスカは次の本に手を取る。
「ノベルも?」
「うん。あれがあって、だからこれはこうみたいな‥‥そういう感じ。」
「ふーん。それもいいね。」
カンナイの手が止まる。
「お兄さんはどう思うの?」
「俺は、興味がない。・・・・から自由に読んで自由に解釈する。・・・・それに俺は頭が悪いからね。君みたいにはできそうにないよ。」
二冊目にもすべて目を通し終える。
「・・・・お兄さん・・・三冊目もどうぞ。」
「んっ・・・そりゃどーも。」
アスカが小さな手で持たれたそれに手を伸ばす。三冊目を開くとするカンナイが口を開く。
「なんで・・・・人を殺す人間がいるの?」
「それは・・・・・人に・・・・・よるんじゃないか、な。」
上を気にすると、電球が垂れさがっている。
「例えば?」
「破壊衝動みたいなのとか・・・あと、自暴自棄とか・・・・それと逆恨みとか・・・・後・・・。」
アスカには何かがよぎる。
「後?」
純粋な声がアスカの耳に通る。
「後・・・・・・止む負えない・・・・じ、事情とか。」
「・・・・・・・・なんで?なんで、人を殺すことにやむ負えないことがあるの?」
アスカのページをめくる手が止まる。
「・・・・・・・・」
言葉も止まる。会話も止まる。
「分かんない・・・・・いったいどんな理由があれば人を殺せるの?分かんないよ。」
「お、・・・・・・自分の子供を助けるため・・・とか?」
アスカには頭上の電球がバチバチと音を鳴らしている気がしてくる。
「ああ、後・・・あれ。戦争とか、自衛のためとか・・・」
カンナイの声が荒くなる。
「分かんない。戦争なんて分かんないよ!そんなの教科書の話じゃないの?」
カンナイが立ち上がる。
「カンナイ・・・・君は今、どうしたい?」
二人の手元にはもう本の類はない。
「・・・いま分かった・・・・殺したい、パパとママを殺したやつを最大限の不幸にしたい。」
「・・・」
カンナイの心で区切りがついたことで、本の世界が崩れていく。
その間、アスカは何もすることができなかった。ただ唇を噛み、飲み込めない憂鬱を咀嚼するばかりであった。
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