父さん‐ななつめ
悲劇があったからといって、全員がプーベテートに罹るというわけではない。だからこそアスカの謝罪の心は強まる。
アスカはカンナイの目の前で屈み、彼を見つめる。そして懐の鍵を服越しに握りしめる。
「俺は君を治す。君がイエレナ・・・俺の弟みたいに異常な力を持ったプーベテートだとしても。」
アスカは立ち上がり、その家を出る。
「アキナ…先にヌーアインシャテンがでても問題ない所を探してきてくれないか?それで…見つかっても見つからなくても、船を降りたところで待っててくれ。」
「オーケーよ。任せなさい!!」
アキナは、天真爛漫、その言葉が似合う。
アキナの背中を見送り、カンナイを部屋に置いたままイエレナと正対する。
イエレナは強く揺れる。勢いよく掴まれた肩は、小さな震えまでは反映しない。
アスカがイエレナを抱いている。小さなままの弟の体を自分の体で包む。グッと力を加えてもイエレナは動じない。ただそれを受け入れる。
しばらくして、アスカ達はアキナのいるところへと向かっていった。
「お待たせ。待った?」
「大待ちよ。さっきなんかそこらへんの子供とかくれんぼしちゃったわよ。」
「ごめん。カンナイがなかなか立ち上がらなくって・・・・。」
アスカが頬を掻き、ははっと笑って見せる。
「んで見つかった?広そうなとこ。」
「・・・・なかったわ!」
アキナが自信たっぷりに言う。両手を腰に当てたせいか、なおのこと自信ありげだ。
「・・・・・一緒に探しに行きますか。」
そうして旅先の店やら新聞の隅々まで探し、ようやく絶好の場所を見つけ出す。
そこはアプシートから少し離れた野原。花々が絶賛咲き誇っている。風が吹けば、花びらは散り、空を彩りに舞い上がっていく。
「もうここぐらいしかないかなぁ・・・・・花・・・・・うーん。」
「良いんじゃない?目覚めたときに、いい景色の方がうれしいんじゃない?そのカンナイって子も。」
アスカが微笑みながら頷き、一枚の上着を脱ぐ。
首から垂らされた魔法の鍵が、午後の60°付近に位置した太陽に照らされる。
「じゃ、行きます。・・・よろしくお願いします。」
アスカは、首の紐を解き、魔法の鍵を自由にする。カンナイの胸に手をあて、心臓のあるあたりに鍵を差し込む。
”アーフ・シュリーセント”
軋む音をたてながら、アキナが差し込んだ鍵を回す。
アスカの意識が飛ぶ。正体不明の浮遊感に襲われるとともに吐き気を催す。
叩くように意識が体に戻ると、アスカはまた野原に咲く花を瞳に収める。そしてアスカの拳は強く握りこんだことで、爪が肉を引き裂き、血が流れ落ちるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
感想お待ちしています。
次話もお楽しみください。




