表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術的鍵師物語  作者: mono
第五

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/76

父さん‐むっつめ

 ヴィーダーからアプシート行きの船に乗り込んだアスカ達三人は、日をまたいでアプシートへと到着した。


「ア゛ァァ~・・・船、しんど。」


 アスカが、すぐそこにあったベンチに腰を掛け、項垂れる。

 使い物にならなそうなアスカの代わりに、アキナがカバンから依頼書を取り出す。


「う~ん・・・・・あっちかな?」


 依頼書に書かれた地図をぐるぐると回転させながら頭を掻く。

 しかたなくアキナもベンチに座り、一呼吸を入れる。


「まっ、焦ることはないわよね。」


 アキナが背もたれに身を寄りかからせ、アスカの肩に手を置く。

 

「なんか・・・俺が励まされてる・・・・」


「冗談よ。」


 アキナの眼は真剣、代わりに口角が上がっている。


「はぁ・・・そろそろ行きますかねぇ。」


 アスカが立ち上がり、澄んだ空気を思いきり吸い込む。体を伸ばし、大きく欠伸をする。


「よし!」


 アスカが座っているアキナに手を差し出すと、アキナもそれに応じ、スムーズに立ち上がる。

 そうして進み始めた三人は、依頼の家を目の前にする。

 無意識か、アスカは大きく息を吸ってから扉を叩き、その古びれたそれを軋ませる。


「はいはーい。」


 中からは女性の声が聞こえてくる。若くはない。扉が開かれると、少しばかり歳が過ぎた女性が出迎える。


「ええ、っと・・・・・どなたかしら?」


「アスカと申します。鍵師の依頼を受けたのですが、間違いないですかね?」


 年増な女は濡れた手をエプロンで拭い、よそいきのその表情を変える。


「向かいの・・・・いや少しついてきてください。」


 そういうと女は三人を連れ、道を挟んだ反対側の家に歩いていく。扉の前で一度立ち止まり、一つの提案をする。


「そっちの小さい子には、見せない方が良いかも。」


「・・・・じゃあ私とイエレナは外で待ってるわよ。」


 アスカと女は二人を残し、扉の開かれた家にあがる。

 生温い空気に腐敗臭が混じっている。

 誰もいない。生に満ちた人間は誰もいない。ひどく肌の冷え切ったと見える大人が二人、綺麗に並べられている。加えて体の大部分は、ブランケットが掛けられている。まるで何かを隠す様に。

 そしてもう一人。寝込む大人に背を向ける形で一人の少年が座っている。


「・・・・あの子か。」


 白髪の少年は、血に染まったような朱色の眼をぼんやりと持っている。

 アスカはその少年に近づき、頬に触れる。自分の手と彼の頬の色の違いでプーベテートであることを実感する。

 

「ねぇ、君の名前教えてくれないかい?」


 すこし間が空く。


「喋らないわよ。・・・・・カンナイ。その子の名前は、カンナイ。・・・・両親をなくしたかわいそうな子・・・・」


 アスカが目を細める。


「鍵師さん・・悪いけど私はもう戻るわ。自分の子が大事なの。」


「はい。分かりました。ありがとうございます。でも・・・焦らなくって大丈夫ですよ。多分、この町には、もう殺人鬼・・・親殺しはいないでしょうから。」


 言葉の意味を理解する前に、女は帰っていってしまう。


「ごめんな、カンナイ・・・・。」


 アスカは、触れていたの頬の手を静かに戻し、俯くのであった。

読んでいただきありがとうございます。

感想お待ちしています。

次話もお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ