父さん‐よっつめ
父と子。
アスカとその父が対面している。
「アンタだろ。親殺しってアンタなんだろ。なんだよ、つくるって、償いって、いったい何してくれてんだよ。」
「・・・まだ俺は何も答えてないだろ。・・・・ただ、そうだな、うん。俺がその親殺しってやつに変わりはない。」
アスカの飲み込んでいた唾の味が変わる。
男は続ける。
「まぁそう悲観するな。アプシートでイエレナのヌーアインシャテンを引き出しさせすれば、イエレナはは帰ってくる。一件落着だ。」
「どこがだよ。」
アスカが拳を握りこむ。
「?・・・・・何をいってるのかさっぱりだ。弟が戻るんだぞ。またイエレナと話せるんだぞ。それなのに、なぜそんな顔してるだ?お前だってイエレナを探す手立てを見つけるためにプーベテートを見て回ってたんだろ?違うか?母さんを殺したあのヌーアインシャテンを倒すためには、イエレナ以上の強力な力が必要になる。だから依頼を装ってプーベテートを見て回ってたんだろ。なぁそうだろ?そうだよな?・・・・なんだ違うのか?」
「違う!・・・・俺は・・違う。俺はプーベテートを治したかっただけ。ただそれだけだ。」
狼狽えるアスカの声。男の声は、冗長で退屈さに包まれている。
「イエレナを治したくないのか?いったい今まで何をしてたんだ?お前は。なんでイエレナを闘わせてるんだ。守るべき対象だろ?弟なんだから、守ってやれよ。たった一人の弟だろ。」
「・・・・・・・人殺しなんかが講釈垂れるなよ。もう、もういい。あんたと話すことはない。・・・・・・・・・俺は、アプシートに行く。海を渡ってアプシートにいく。」
さざ波が男の足元に届く。そしてまた海に戻っていく。
アスカにはそれが届かない。
「俺は治す。アプシートにいるプーベテートを治す。」
「おい、アスカ・・・・・」
「うるさい!!!」
アスカが男の声を遮るとそのまま砂浜を後にする。
潮が満ちていき、落ちる夕焼けを映す面積が増える。
「・・・・いい報告を待ってるぞ。」
男の声は波の音に引きずり込まれる。
アスカが酒場の扉を開くと、先ほどよりも賑わっている。
「ああ、アスカくん。おとうさんには会えた?・・・ふふっ良い瞳。まるで夜の海みたいだ。」
「黙れ。」
「それと君の連れ、なかなかにかわいらしい声だったよ。・・・今頃は疲れて宿屋のベッドで寝てるんじゃないかな。」
ハッセンを睨む。
「怖いなぁ。そのままの意味だよ。あーん、そんなに睨まないでよぉ。」
アスカは走り出す。宿屋に向けて、アキナのいるところに向かって。全速力で走る。
勢いよく扉を開く。
「あら、アスカ・・・・どうしたの?・・・ていうかなかなか戻ってこないから先に戻っちゃったわよ。荷物も持って帰ってあげたんだから感謝してよね。」
アスカはよろよろ歩き、胸のあたりを抑える。
「アキナ・・・アキナは、なにもされてない?変な男になにかされてないか?」
「変?・・・ああ!酒場でアスカと話してた人に名前を聞かれたわよ。ナンパしに来たみたいだったけど・・・でも私の美しさに恐れてすぐにどっかいっちゃったわよ。」
屈みながらアスカがベッドに座るアキナの手を掴む。
「ほ、本当にか?なにも、なにも嫌な思いしてないか?」
「だーいじょぶよ。なんてたって私にはイエレナがついていたもの。生半可な奴はイエレナが一撃よ。」
イエレナがむんと腕を鳴らしている。
安堵したのかアスカは、アキナの太ももに倒れこむ。
「!!!!!」
アキナは声をあげずに驚嘆する。そしてその自慢の赤髪で頬と口元を隠す。
「よかった・・・・。」
緩む心と反対にアスカの手の力はさらにアキナを離さなかった。
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