父さん‐ふたつめ
アスカ達三人が選んだヴィーダーという町。
海岸に位置し、安全な海路も確保することができる。周囲の街からの交通路も整備されている。そのこともあってかこの町は、再会の町という名目で名を売られている。
「いやーついたね。なーんだか風情のあるところだねぇ。」
アスカがアキナの鼻を抑えながら言う。
「んね。海がきれい。きらきらだぁ。」
アキナの瞳に海の煌めきが写る。
海を照らす太陽は青空に打ちあがっている。
昼時である。
三人は宿舎の鍵を受け取った後、小腹を満たすため、一つの酒場へと向かっていった。そこは海辺を背にどっしりと構えている。
イエレナが背伸びをしながら手を伸ばし、扉を開く。
中からは唾液にまみれた笑い声や明るみのある声、食器の音やら次々と置かれるジョッキの音で騒々しくなっている。
そんな中、堂々と臆することなくイエレナは空いた席を見つけ、勢いよく座る。
アスカの耳が、一つの注意を選び取る。
「おお、にいちゃん、なんだいその鍵は?なかなか上等な金じゃぁねぇか。」
「ええ。ありがとうございます。特別なんですよ・・これ。」
アスカが声のする方に思わず目を向けると、そこには一人の若い男がいた。目元が前髪に隠れてはいるが、表情を変えず、ちゃらちゃらと鍵を揺らしながら酔っぱらいに対応している。
「おやじさん・・・ひとり、ですか?」
「あ、ああ、・・・どっからどう見ても一人で飲んでるだろうぉ。なんだぁ、ナンパかぁ!?俺にはぁ愛するハニーとベイビーがいるんでねぇ。もうておくれだぜぇ。」
「べいびぃ・・・そうですか・・・・・。残念です。」
そう言うと男は席を変え、また鍵を見せびらかす様に首から垂らし続ける。
アスカも荷物を置く。
「ごめん・・・先なんか食べてて、アキナもイエレナも好きなもん食ってていいから。」
アスカは自分と同じ魔法の鍵らしきものをもった男と同じ卓の椅子に腰掛ける。
「すいません。ナンパしていいすかね。鍵をもったお兄さん。」
若い男は、アスカの顔をじっと見る。そして言う。
「もちろん・・・・歓迎しますよ。君こそ、鍵持ってるじゃん。」
指の指されたアスカの胸には魔法の鍵が剝き出しになっている。
「ええ、奇遇ですね。」
浮き沈みのないアスカの声は周囲の騒音で搔き消されそうになっている。
それでも若い男は余裕のありげな声で話を進める。
「僕はハッセンって言います。僕を選ぶなんて君・・・いい趣味してるねぇ。」
ハッセンと名乗るアスカと同い年ぐらいの男がにこやかに笑っている。
「ははっ、そりゃどーも。俺はアスカです。よろしく。・・・・あんたその鍵、どうやって手に入れた?」
アスカがハッセンを強い視線で睨みつけるが、ハッセンは黒髪からこぼれる眼を細めながら微笑んでいる。
「ふふっどうやってでしょうぉ。・・・・・もしかしたら君のお父さんから・・・・へへっ、なんてね。」
ハッセンは上がる口角に指をはめ込みながら、まだまだ笑う。
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