筆跡‐じゅうにこめ
弱った心の吐露を終え、アスカが再び目を閉じようとする。
「ねぇアスカ・・・・・今はさ、寝ちゃおーよ。きっと誰も聞いてなかったよ。そう寝言だよ。大丈夫。だいじょぶだから。これからも三人で・・・・ね?お兄ちゃんがいなきゃ、イエレナはいったい誰に縋ればいいの?」
アキナは、眠った体のままであったが、なんとか立ち上がり、イエレナを抱きかかえる。そしてそのままアスカの眠る古びれた椅子の横に座る。
「今は、もう寝よ?ほら手ぇ出して。・・・・おやす。おやすみだよ、アスカ。」
アキナはアスカの手を取る。加えてイエレナの手を取る。そして二人の手はを重ね合わせ、アキナ自身の掌も覆いかぶさせる。
「おやすみ、おやすみ。」
アキナは二人の手を、そして自分の手をその懐で温めていった。
そうして二人はまた眠りに落ちていった。
食器が擦れあう音。一つのコップが机をたたく。
カツカツカツ
石造りの床が鳴らされる。
「三人とも、そろそろ動き出しなされ。もう昼になる頃じゃよ。」
イエレナが顔をあげ、じっとしている。
シュパースは、自らがかけてあげた毛布を3人から取り上げる。
「おぬしら、朝じゃ、昼じゃ、目覚めじゃ。飯も作ってあるから、食べてきなされ。」
アスカとアキナがようやく目を覚ます。
アキナは慌てて手を放し、へそのあたりで、両手を合わせる。
「それと、わしは先に帰るからのぉ、そろそろバレそうじゃ。おぬしらは来た道でなくとも正規の道・・・正門から帰ることができるから、そこから帰っておくれ。ではまたのぉ。またこうやって魔法を触れる口実ができてよかったわい。」
颯爽とシュパースは帰ってしまった。
老いぼれてるのか、活き活きしているのか、はっきりしない。
「・・・・・とりあえず、ごはん食べよっか。」
重い腰をあげ、卓につく。
「いただきます。」
「いただきます。・・・・ラーメンかぁ・・・重くない?」
続々と麺をすすっていく。
「昨日は、ごめん。」
アスカが肩をさすりながら言う。
「別に・・・・。でも大事なのは対話だと思うわ。話すっていうのは大事よ、アスカだってわかってるでしょ?それに私だってごめんを言う立場にいるわ。半ば勝手についてきたみたいなものだもん。お互い様。」
アキナが麺をすする。
「うん。」
アスカもまた麺をすする。
「ねぇ、アキナこれからもよろしくお願いしていいか。」
「?・・・・もちろんよ。」
食事を済ませた三人は、身支度を済ませ、家を出る。
正門へと向かう途中、被害者連絡簿の看板を通り過ぎる。多くの名前が記されている中にはタリとナイの名前も記されていた。そしてシャーデの名前も。
街全体で、支援の形態を取るつもりらしい。
しばらく歩くと三人は、ようやく街を出る。
久方ぶりの日差しだ。
ぐんと体を伸ばすアキナが、ふぅと息を吐く。
「行きますか、とりあえずね。」
アスカは、こくりと頷きながら、ポケットにしまっていた依頼書を取り出す。
すると依頼書以外の一枚の紙が、ポロリと零れるのであった。
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