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魔術的鍵師物語  作者: mono
第四

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39/81

筆跡‐じゅういっこめ

 ナイはポケットから何かを取り出し、アスカに手渡す。


「紙?・・・・俺に?・・・・・」


「うん。前にね、変なおじさんにもらったんだ。」


 アスカがその紙に書かれた筆跡に目を通す。


゛アスカへ やりたいことを続けなさい”


 その筆跡の正体が誰であるかの推測は文字からは難しい。なにより、誰からのものかも書かれてはいない。しかしアスカが思うに、これはアスカの父からのもので間違いない。

 根拠はない。しかしこれは父のものである。


「ねぇ、これ・・・・いつ・・・・というかそのおじさんなにか言ってなかった?」


 ナイは静かに首を振る。


「うーん、ごめんっていわれた気がする。ほかには何も。あとお兄さんみたいにあの世界で話したよ。別のお兄さんと。」


「別の?………そう。・・・・・まぁいいや。ありがとな。渡してくれて。」


 アスカはにこりと笑い、タリとナイに別れを告げた。

 アスカ達は、子供支援組合と書かれた比較的新しさのある建物を横目にシュパースの寝るところに帰っていった。


「はぁ疲れた。」


 アスカは、そこらにある家にもたれかかり、ようやく気を下ろす。

 

「もうだいぶ時間が経ってるわね。朝日も昇ってくるんじゃないのかしら。というかもう昇ってる?」


 アキナが窓から顔を出し、空を眺めるが、特殊なこの街ではそれが分かりづらい。

 紫色に光る影のある景色があるばかりである。


「すこしだけ、寝よぅ・・・・・」


 アスカがあくびとともに、重たい瞼を閉じる。

 長い長い一日が終わった。

 明朝、椅子で眠りについたせいか、それほど疲れが取れていない。

 硬い石造りの床でよこになったおかげか、まったく疲れが取れていない。

 アスカとアキナがその目を開ける。

 曇天により外はどんよりだ。


「お、はよ・・・・アキナ・・・・・」


 寝不足の眼は、ナイから渡された紙の筆跡を見つめる。


「ねえアキナ・・・・・俺、ほんとは魔法の力を手に入れたらさ、イエレナを置いて一人で治療をし続けようと思ってたんだ。俺のやりたいことはプーベテートの病を治していくこと、そしてイエレナの笑顔をもう一回見ることのこの二つ。でもイエレナを治すほどの力は今はない。だからって諦めるわけじゃないけどさ、自分の弟が駄目だからって、ほかの子たちを助けないわけにはいかない。だから続けたい。」


 言葉は滞りなく続く


「だって治せるのは、この魔法の鍵だけ。でもイエレナをそれに付き合わせてていいのかって・・・・。ずっとイエレナの手、傷が治り切ってない。そんなのさ・・・見たくないよ、イエレナが傷つくところなんて。付き合わせてるんだからなおさら。だからこの魔法でさ、どうにかしたかった。いやどうにかするんだって、この魔法で。」


 アキナは耳を傾け続ける。


「昨日、ナイからもらった”あれ”あるじゃん。多分父さんからの物なんだ。俺はさ、やっぱり自分たちだけどうにかなるなんて思考を持つのは無理だなって思った。俺は人を助けていたい。だからこれからも依頼は受け続ける。自分がどんなになっても。」


 アキナに語り掛けるアスカ。その空間には当然イエレナもいる。

 そして震える声がアスカから漏れ出る。


「・・・・ごめんな、イエレナ。今まで闘わせて・・・・俺の都合なんかで、俺の虚栄心なんかで。」


 昨日聞いたような鼻をすするような音。


「・・・・・ねぇ、俺の正解はどこ?」


 ここでアスカの息が切れる。

 呼吸に全力を注ぐようになるアスカは、父の筆跡を握りしめる。


「父さん…なんでそばにいてくれないんだ…。」


 アキナは、口を開こうにも開けなかった。

 自信がなかった。アキナにとっての自分になんて自信がなかったのだ。きっとこの状況でければ、話してはくれなかったであろうこと。

 なによりアキナにも、なにが正解かなんて分からなかった。

 朝日がのぼる。しかし分厚い雲はそれを遮るのだった。

読んでいただきありがとうございます。

感想お待ちしています。

次話もお楽しみください。

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