筆跡‐いつつめ
地下へと進んでいったアスカ達は、ぽっかりとつくられた大きな広場へとたどり着いた。
「やっちゃいましょ。アスカさぁん、どかんといっちゃいましょ。」
意気揚々と手を仰いでいる。
「ええっと・・・・じいさんが言ってたのは、確か文字をなぞれば・・・・・」
アスカは、誰もいない方に正面を向け、修繕された魔法の書を開く。そして一枚一枚に刻まれた黒の筆跡を人差し指でなぞっていく。
するとなぞられた文字の順で、黒を縁取っていた金が輝きだす。
最後、勢いよくなぞっていた指を横に振り放つとアスカの口が無意識に動く。
「フルミネ!!」
”フルミネ”そう叫ばれた瞬間、アスカの前方に複数の稲妻が水平方向に走り、数十メートルほどで徐々に消えていった。
その魔法の威力は、地面の削り具合から把握できた。稲妻の通過点は、抉り取られるように削れ、燃えたかのような灰色の粉塵が舞っていた。
「すごい!すごい!・・・ほかには、ほかにはないの?」
「ええーと、ここからが次のやつかな?」
パラパラとめくり、先ほどと同じ要領でなぞる。
「ランポ・・・・」
唱えられた魔法は、まさに雷そのもの。光りの道を作りながら、垂直方向に振り下ろされた。
そしてさらにページをめくっていき、最後の部分にまで目を通す。
「・・・・たぶんあと一つある。全部で三つの魔法が使えるみたい。じゅあ最後のいきます!」
「トゥオーノ!!」
魔法の書を筆跡をなぞった後、アスカの手が前方に突き出される。
空が破裂したような音とともに、アスカの手に纏うように雷の衝撃がつくられた。
距離で言えば、ほんの数センチ。かなり接近しなければこれは使えないだろう。
「おおぉーーー。いやーすごかったぁ。」
小粒な拍手をするアキナの顔はこれまでの一週間のなによりも煌めいていた。その目に映るのはアスカ。どうやらアスカも笑っていたらしい。
すべての魔法を使い終えたところで、アスカが自分の懐に違和感を感じる。
熱い・・・そう感じたアスカは、魔法の鍵を取り出す。
熱を帯びながら、光りを放つ黄金の鍵は、その光を立ち昇らせる。
「なんだ?これ・・・・・」
天井に刺さる光。いったいどんな意味があるのか。
「なにかしらね・・・・地上に戻ってみる?」
「そうだね。行ってみようか。」
階段を登っていき、一階に戻っていく。
進めば進むほど徐々に伸びていた光はその方向が変わっていき、外への扉を指し始める。
「外?」
突き進んでいく光の導線を辿っていく三人。ネオンに包まれてはいるが、すっかり夜の様相になっている。
とうとう光の元にたどり着いたがそこは一つの小さな小屋であった。
「あっ消えた・・・・」
役目を終えたのかひっそりと光は消え、その熱もなくなっていった。
アスカは扉に指をさしながら、アキナに顔を向け、こくっと首を頷ける。
「行ってみましょ。なにかがあるのかも・・・・・」
扉をノックするアキナが耳を澄ませる。
「だ、誰ですか?」
中からは子供の声が聞こえる。
「ええっと・・・・」
返答に困るアキナを見据えたアスカが代わりに応答する。
「なにか困ってないですかね?」
ダイジョブです!甲高い声でそう叫ばれたため、顔をしかめたアスカだったが、その扉が突然開かれる。
「イ、イエレナ?ちょっと!」
開かれた扉が明らかにしたその狭い空間。そこには勝手に入っていったイエレナ、そしてふたりの子供だけがいた。異様であるがなにより、その一人は見覚えるのある肌の白さをしていた。
アスカの中で弟の罹る病がよぎる。
そこでアキナが何かに気づく。
「あれ、この子たち前・・・遊園地で見かけたかも。」
「えっ・・・」
プーベテートの疑いのない子供は威嚇するような眼をこちらに向け、もう一人を守っていた。
魔法を手に入れたアスカにとっての最初の治療が始まる。
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